27.消
2007年3月1日ここはシムシの北東に位置する街『ナニカ-Nanica』。
魔法修行で移動できなかったこともありナニカに辿り着くにはかなりの日数を要した。
門番や通行人が俺のことをじろじろみてくる。あたりまえだ。俺の体は今、首と手足を除いて全て水で覆われている。
―
「さて、基本的な魔法がCになったところで次の段階です。
正直Cまでの魔法は習得するのにそれほど苦労しません。威力も対したこと無いですしね。
これからのためにも何か自分の得意なもの一つをBランクまでにもっていく必要があります」
連日のリアカー引き、魔法修行で俺はもうすでにぼろぼろだ。
休みたい。スパルタ過ぎる。視線で訴える、あ、そらした……
「そこでこれを使います」
リアカーに載っている荷物を漁って取り出したそれは図書館にあった魔法力を測る水晶玉だった。
「これは単純に魔法力を測るのにも使えますが、
自分の一番伸びる可能性を秘めている属性を調べる事も出来ます。
さぁこれを持って、あ、片手でお願いしますね。
強く念じてください」
原っぱに大の字になった状態で水晶に力を入れる。
ぼんやりと水晶に何かが映る。それは、渦巻く水。
「【水魔法】、ですね。
今後はこれをBランクにすることだけに力をいれます」
―
「恥ずかしいんですけど……」
「ウルトンさんのためにやってるんですよ?
その状態でイメージを固定化しながら魔法の勉強をすれば上達が早いはずです。
こっちも維持するの大変なんですからわがまま言わないで下さい」
「はい……」
俺の羞恥心よ消えて無くなれ。
魔法修行で移動できなかったこともありナニカに辿り着くにはかなりの日数を要した。
門番や通行人が俺のことをじろじろみてくる。あたりまえだ。俺の体は今、首と手足を除いて全て水で覆われている。
―
「さて、基本的な魔法がCになったところで次の段階です。
正直Cまでの魔法は習得するのにそれほど苦労しません。威力も対したこと無いですしね。
これからのためにも何か自分の得意なもの一つをBランクまでにもっていく必要があります」
連日のリアカー引き、魔法修行で俺はもうすでにぼろぼろだ。
休みたい。スパルタ過ぎる。視線で訴える、あ、そらした……
「そこでこれを使います」
リアカーに載っている荷物を漁って取り出したそれは図書館にあった魔法力を測る水晶玉だった。
「これは単純に魔法力を測るのにも使えますが、
自分の一番伸びる可能性を秘めている属性を調べる事も出来ます。
さぁこれを持って、あ、片手でお願いしますね。
強く念じてください」
原っぱに大の字になった状態で水晶に力を入れる。
ぼんやりと水晶に何かが映る。それは、渦巻く水。
「【水魔法】、ですね。
今後はこれをBランクにすることだけに力をいれます」
―
「恥ずかしいんですけど……」
「ウルトンさんのためにやってるんですよ?
その状態でイメージを固定化しながら魔法の勉強をすれば上達が早いはずです。
こっちも維持するの大変なんですからわがまま言わないで下さい」
「はい……」
俺の羞恥心よ消えて無くなれ。
26.解
2007年3月1日【氷魔法:C】習得
基礎を叩き込んだ後、氷付けにされた。liveの世界だから凍傷も命に関わるほどにはならないらしい。
氷の魔法を使って氷にヒビを入れることが出来たら助けてくれるらしい。
2日氷付けのままだった。
【水魔法:C】習得
基礎を叩き込んだ後、お姉さんが作り出した水の空間にぶち込まれた。
水の魔法を自分で使って水を揺らすことが出来たら外に出してくれるらしい。
おぼれた。
3日同じことをやった。
解った、このひとサドだな?
基礎を叩き込んだ後、氷付けにされた。liveの世界だから凍傷も命に関わるほどにはならないらしい。
氷の魔法を使って氷にヒビを入れることが出来たら助けてくれるらしい。
2日氷付けのままだった。
【水魔法:C】習得
基礎を叩き込んだ後、お姉さんが作り出した水の空間にぶち込まれた。
水の魔法を自分で使って水を揺らすことが出来たら外に出してくれるらしい。
おぼれた。
3日同じことをやった。
解った、このひとサドだな?
25.奮
2007年3月1日とりあえずモエリからコダテに移動し、そこからシムシに向かうことになった。
コダテからは体力をつけるために徒歩で移動している。
朝から昼まで生活用品・お姉さんの私物・お姉さんを乗せたリヤカーを引っ張って移動。
お姉さんは【幸運の女神】を見つけることが出来るように【検索】の修行をしているようだ。
時折馬車が通りすぎる時に「あの人の胸ポケットの中に!!欲しい!!」とブツブツ言っていた。
正直リヤカーを引っ張りながらじゃ昼には体力が尽きる。
昼から夜までは「中級者-上級者との圧倒的な差-」を使い魔法の勉強。
お姉さんにも指導してもらっている。
(「雷魔法のイメージがつかみきれないんですが、どうすればいいんですか?」
「イメージをつかむには体感するのが一番ですよー!」
ビリビリーッ!)
おかげで【雷魔法:C】を習得するに至った。
(「とりあえず覚えられる魔法は全部覚えましょう!
Bランクまでいけばいろいろバリエーションが増えるんですよ!」)
道行く人にも【幸運の女神】の情報を聞くがそれらしい情報は得られない。
人探し、修行、どっちも奮闘中だ。
コダテからは体力をつけるために徒歩で移動している。
朝から昼まで生活用品・お姉さんの私物・お姉さんを乗せたリヤカーを引っ張って移動。
お姉さんは【幸運の女神】を見つけることが出来るように【検索】の修行をしているようだ。
時折馬車が通りすぎる時に「あの人の胸ポケットの中に!!欲しい!!」とブツブツ言っていた。
正直リヤカーを引っ張りながらじゃ昼には体力が尽きる。
昼から夜までは「中級者-上級者との圧倒的な差-」を使い魔法の勉強。
お姉さんにも指導してもらっている。
(「雷魔法のイメージがつかみきれないんですが、どうすればいいんですか?」
「イメージをつかむには体感するのが一番ですよー!」
ビリビリーッ!)
おかげで【雷魔法:C】を習得するに至った。
(「とりあえず覚えられる魔法は全部覚えましょう!
Bランクまでいけばいろいろバリエーションが増えるんですよ!」)
道行く人にも【幸運の女神】の情報を聞くがそれらしい情報は得られない。
人探し、修行、どっちも奮闘中だ。
24.7
2007年3月1日何だこれは。
この家も騒動に巻き込まれたのか?
いや、ここは港からはかなり離れてるし……でもこれは……
お姉さんに着いてフォロッサをどんどん離れていくと一軒の家があった。
「その幻覚魔法を抑える魔法アイテムがあったはずなんです。
いつまでも手を頭につけてるわけにはいかないでしょう?」
俺何も説明してないのに……
「【読心術】、便利ですね……」
「不安定なスキルなんですけどね、人によって読みにくかったり……
ウルトンさんは特に意思が読み取りやすいんですよ。」
言いながらドアを開けるお姉さん。そこには未知の世界が広がっていた。
猛烈に汚い。
足の踏み場がないとはよく言うが、この状況を簡潔に述べるならば、床がない。
様々な本、アイテムが散らかっている。頭の取れたコケシとか一体何に使うのか。
驚愕している俺を気にせずにお姉さんは【検索】のポーズを取っている。
……この汚さは【検索】の副作用か?
「あ、ありました!これです。」
タンスの裏側をごそごそやって取り出したそれは皮で出来たリング状のものだった。
あれ、というかそれ、首輪じゃないですか?ペット用の。
なんで近づいてくるんですか?あれ、首に何してるんですか?
カチャリ、首にはめられた。
「そのアイテムをつけていれば掛けられた魔法効果を一つだけ打ち消すことが出来るんですよ。
結構レアなんですからね。」
恐る恐る手を頭からはずしてみる。幻惑は起こらない。
でも首輪って……
「壊れたらおしまいですし、一時凌ぎにしかなりません。
フォロッサ城にいるザクロという通称【幸運の女神】ならその魔法を解くことが出来るかもしれません」
ザクロ?ああ、さっき城で会ったあの魔法使いか。
「ですが……【幸運の女神】は先ほどカイドを出発しました。
なんでもカイド王の命令だとかなんとかで……」
「まじで!?」
どうする?【幸運の女神】を追う?
魔法の修行は?……でも図書館は壊れてしまった。
いや、アトラに全部聞けば……カイドの復旧や襲撃の真意を知るのに何かと急がしいだろう。
それにアトラに頼ってばかりはいられない。自分で決めなければ。
俺の全てを読んでいるお姉さんが口を開いた。
「【幸運の女神】を追いましょう。
私が同行します。私の【検索】を使えば普通より早く見つけられるはずです。
魔法の修行も私に任せてください。
それに、あなたはカイドを出た方がいいと思います。
ここは貴方にとって危険な場所になると、思うんです。」
いろいろ不思議だった。この人はどうして?
「なんでここまで俺に良くしてくれるんですか?」
「貴方ならこの世界の……いいえ。なんでもありません。」
言いかけた言葉を引っ込める。珍しい。
「それに」
「それにあなたは、魔法使いを目指す私の大切な後輩ですからね!」
――
荷物を詰め込む。
俺には元々旅道具というものがなかったから全部お姉さんが用意してくれた。
それとは別にリュックのようなものを背負っていた。
中身は何か、と聞いても「7つ道具です!」という答えしか返ってこなかった。
カイドを出発!
この家も騒動に巻き込まれたのか?
いや、ここは港からはかなり離れてるし……でもこれは……
お姉さんに着いてフォロッサをどんどん離れていくと一軒の家があった。
「その幻覚魔法を抑える魔法アイテムがあったはずなんです。
いつまでも手を頭につけてるわけにはいかないでしょう?」
俺何も説明してないのに……
「【読心術】、便利ですね……」
「不安定なスキルなんですけどね、人によって読みにくかったり……
ウルトンさんは特に意思が読み取りやすいんですよ。」
言いながらドアを開けるお姉さん。そこには未知の世界が広がっていた。
猛烈に汚い。
足の踏み場がないとはよく言うが、この状況を簡潔に述べるならば、床がない。
様々な本、アイテムが散らかっている。頭の取れたコケシとか一体何に使うのか。
驚愕している俺を気にせずにお姉さんは【検索】のポーズを取っている。
……この汚さは【検索】の副作用か?
「あ、ありました!これです。」
タンスの裏側をごそごそやって取り出したそれは皮で出来たリング状のものだった。
あれ、というかそれ、首輪じゃないですか?ペット用の。
なんで近づいてくるんですか?あれ、首に何してるんですか?
カチャリ、首にはめられた。
「そのアイテムをつけていれば掛けられた魔法効果を一つだけ打ち消すことが出来るんですよ。
結構レアなんですからね。」
恐る恐る手を頭からはずしてみる。幻惑は起こらない。
でも首輪って……
「壊れたらおしまいですし、一時凌ぎにしかなりません。
フォロッサ城にいるザクロという通称【幸運の女神】ならその魔法を解くことが出来るかもしれません」
ザクロ?ああ、さっき城で会ったあの魔法使いか。
「ですが……【幸運の女神】は先ほどカイドを出発しました。
なんでもカイド王の命令だとかなんとかで……」
「まじで!?」
どうする?【幸運の女神】を追う?
魔法の修行は?……でも図書館は壊れてしまった。
いや、アトラに全部聞けば……カイドの復旧や襲撃の真意を知るのに何かと急がしいだろう。
それにアトラに頼ってばかりはいられない。自分で決めなければ。
俺の全てを読んでいるお姉さんが口を開いた。
「【幸運の女神】を追いましょう。
私が同行します。私の【検索】を使えば普通より早く見つけられるはずです。
魔法の修行も私に任せてください。
それに、あなたはカイドを出た方がいいと思います。
ここは貴方にとって危険な場所になると、思うんです。」
いろいろ不思議だった。この人はどうして?
「なんでここまで俺に良くしてくれるんですか?」
「貴方ならこの世界の……いいえ。なんでもありません。」
言いかけた言葉を引っ込める。珍しい。
「それに」
「それにあなたは、魔法使いを目指す私の大切な後輩ですからね!」
――
荷物を詰め込む。
俺には元々旅道具というものがなかったから全部お姉さんが用意してくれた。
それとは別にリュックのようなものを背負っていた。
中身は何か、と聞いても「7つ道具です!」という答えしか返ってこなかった。
カイドを出発!
23.始
2007年3月1日「だ、大丈夫ですか!?」
手を頭につけながら立ち上がっていると
目の前を通りかかった白い魔法使いが言った。
「肩、怪我してますね。今治しますから」
肩の傷は一瞬で塞がった。この城ではまだ会った事がなかったけど高位の魔法使いなんだろう。
「頭のほうはどうかしたんですか?さっきからずっと手で抑えてますけど……」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「そうですか?……そうですね、疲れがたまっているようには見えますが特になんとも無いみたいですね。
それでは、お大事にしてください。」
そういうと彼女は走っていった。ネーム:確認:ザクロ
「11さん、すみません、お待たせしてしまって」という声が聞こえてきた。
イレブン……変な名前だ。
おぼつかない足取りで王の間に向かう。
アトラならこの騒動を説明してくれるはずだろうと思ったからだ。
だが王の間には誰もいなかった。出かけているのか?
この幻惑魔法も解いてもらおうと思っていたのに……
仕方が無いので外に出てみる。たくさんの建物が崩壊している。何かの襲撃にあったのは間違いないだろう。
街の人もフォロッサ城の兵士も救出作業や復旧作業をしている。邪魔できそうにない。
それなら図書館にでも行って呪いの解除方法でも、と思ったがそれも適わなかった。
フォロッサ大図書館の入り口が全壊していたからだ。
外からじゃ中の様子まではわからないが、本を探すことなんてもう出来ないだろう。
あの人は……
「たくさん、昇天しました。」
受付のお姉さんが後ろに立っていた。……良かった。
「何が……」
あったんですか?といい終わる前に彼女は話し始めた。
「リヴァイアサン、巨大な海蛇のモンスターですね。
それがフォロッサを襲いました。圧倒的な強さで何百、何千人ものカイドの人たちが昇天しました。
それと同時に大図書館に激震が起こりました。
フォロッサ大図書館には様々な保護魔法が掛かっています。
でも、それでもこの圧倒的な魔力にかかっては、なすすべもなく、崩壊しました。
私は入り口の傍にいたので何とか助かる事が出来ました。
その代わり魔法使いを志すたくさんの人たちが、死にました」
淡々と話すこの人にかける言葉が見つからない。
一拍おいて更に話し続ける。
「私がこの街にできることは今はもうありません。
ですが、あなたにしてあげる事はあります」
「え?」
「着いてきて下さい」
いつもの笑顔だった。何が始まるんだ?
手を頭につけながら立ち上がっていると
目の前を通りかかった白い魔法使いが言った。
「肩、怪我してますね。今治しますから」
肩の傷は一瞬で塞がった。この城ではまだ会った事がなかったけど高位の魔法使いなんだろう。
「頭のほうはどうかしたんですか?さっきからずっと手で抑えてますけど……」
「あ、いえ、大丈夫です。」
「そうですか?……そうですね、疲れがたまっているようには見えますが特になんとも無いみたいですね。
それでは、お大事にしてください。」
そういうと彼女は走っていった。ネーム:確認:ザクロ
「11さん、すみません、お待たせしてしまって」という声が聞こえてきた。
イレブン……変な名前だ。
おぼつかない足取りで王の間に向かう。
アトラならこの騒動を説明してくれるはずだろうと思ったからだ。
だが王の間には誰もいなかった。出かけているのか?
この幻惑魔法も解いてもらおうと思っていたのに……
仕方が無いので外に出てみる。たくさんの建物が崩壊している。何かの襲撃にあったのは間違いないだろう。
街の人もフォロッサ城の兵士も救出作業や復旧作業をしている。邪魔できそうにない。
それなら図書館にでも行って呪いの解除方法でも、と思ったがそれも適わなかった。
フォロッサ大図書館の入り口が全壊していたからだ。
外からじゃ中の様子まではわからないが、本を探すことなんてもう出来ないだろう。
あの人は……
「たくさん、昇天しました。」
受付のお姉さんが後ろに立っていた。……良かった。
「何が……」
あったんですか?といい終わる前に彼女は話し始めた。
「リヴァイアサン、巨大な海蛇のモンスターですね。
それがフォロッサを襲いました。圧倒的な強さで何百、何千人ものカイドの人たちが昇天しました。
それと同時に大図書館に激震が起こりました。
フォロッサ大図書館には様々な保護魔法が掛かっています。
でも、それでもこの圧倒的な魔力にかかっては、なすすべもなく、崩壊しました。
私は入り口の傍にいたので何とか助かる事が出来ました。
その代わり魔法使いを志すたくさんの人たちが、死にました」
淡々と話すこの人にかける言葉が見つからない。
一拍おいて更に話し続ける。
「私がこの街にできることは今はもうありません。
ですが、あなたにしてあげる事はあります」
「え?」
「着いてきて下さい」
いつもの笑顔だった。何が始まるんだ?
22.怒
2007年2月28日「どうせ【隻眼】に化ける前に、クールタイムが必要だったところだぁ。
暇つぶしに、おめぇと遊んでやるよ!」
クサモチが変身した?
いや、違う。【ゼロ:B】の効力で魔力は無効化されるはずだから変身なんか出来ないはずだ。
さっきあいつが言ってた【なりすまし】、それが解けた、ってことか?
「てめぇ誰なんだよ!なんでクサモチに化けてた!」
「おいおい、あんまり、はしゃぐなよぉ。
城の中で昇天の光が立って兵士に気づかれるのもまずいしなぁ。
静かに、じわじわいたぶってやるよ、ぐへへへへへ」
今まで散々強い奴にボコられてきた。だから分かる。
こいつ自体はそんなに強くない。【なりすまし】も対峙している今使われても問題はない。
逃げるか捕まえるか。勝てる可能性があるなら捕まえてアトラにでも引き渡すべきだ。
「ぐへへ」
なんだ?視界が霞む。
「どうしたぁ?ぐへっぐへ」
気がつくと目の前に奴がいた。いつのまに?
「ぐっ!」
慌てて蹴りを出す。
物にあたった感触がなかった、あるのは右肩への痛み。血が出ていた。
「まずは右肩!ぐへへへへ!」
何だ、一体こいつどこから。
「ぐへへ」
背中に奴の影。今度は後ろか!?なら……
振り返り様に、影とは反対側の何も無い空間に蹴りを入れる、感触はない。
「ぐへっへへ!騙されたぁ!騙されたぁ!!」
今度は本物!?左腕を狙ってのナイフ攻撃、皮膚を掠る。
黒ローブ男の姿はもうない。
なら、でたらめに炎を放つ。低級魔法だから詠唱は短くていい、相手の場所が特定できれば。
全ての炎が消散した。
「ぐふふ、初心者にしてはなかなか考えてるがぁ、甘ぇなぁ!
そんなカス魔法、オラにきくかよぉ!」
勘、今度は上から。避けきる。
こいつ、やる気になれば俺を殺せるくせに遊んでやがる!
急に外が騒がしくなった。
地面が揺れる。続いて馬鹿でかい長い、長い唸り声。
轟音、悲鳴。外で何が起きている?
「どうやら【邪眼】の方は、成功したみてぇだな、ぐへへ。
とすると、さっさと作戦を実行しないと、【無常】様に叱られちまうなぁ!」
声だけが聞こえる。姿は無い。
「最後にいいプレゼントをくれてやるよぉ!
この幻惑から自力で抜け出せた奴はいない、苦しめ 苦しめぇ!ぐへへっへへ!」
視界が暗転する、思考が保てない、何を……
「死、絶望、虚無を味わった体がどうなるか、楽しみだなぁ!
小一時間もしたら、ぐふぐへへ」
アルル大峡谷での戦争。怒りのみの感情が支配する場。
死ぬ 皆死ぬ。
スンラとヘロがいた。お互いに殺しあっている。
ヤミハルがいた。兜ごと首が転げ落ちた。
クサモチがいた。肉が裂けバラバラになった。
アトラがいた。絶叫しながら燃え尽きた。
受付のお姉さんがいた。爆発して内臓が吹き飛んだ。
俺がいた。皆を殺していた。
違う、あれは俺じゃない。俺にあんな強さは無い。
でも……俺が殺したも同然じゃないか?
死んでいく。俺が弱かったから。俺は何もしていない。俺は何も出来ない。俺が殺した。俺が。
手を延ばす あと少し あと すこ し
自分の 身体に 両手を!
シュッと短い音、視界が廊下に戻る。【ゼロ:B】の効果、自分に掛けられた魔法の無効化。
頭がくらくらする。幻惑のダメージがひどい。
両手は離せない。【ゼロ:B】は両手を常につけていないと発動できない。
城の中も騒がしい、俺はどれくらいここにいたんだろう?
暇つぶしに、おめぇと遊んでやるよ!」
クサモチが変身した?
いや、違う。【ゼロ:B】の効力で魔力は無効化されるはずだから変身なんか出来ないはずだ。
さっきあいつが言ってた【なりすまし】、それが解けた、ってことか?
「てめぇ誰なんだよ!なんでクサモチに化けてた!」
「おいおい、あんまり、はしゃぐなよぉ。
城の中で昇天の光が立って兵士に気づかれるのもまずいしなぁ。
静かに、じわじわいたぶってやるよ、ぐへへへへへ」
今まで散々強い奴にボコられてきた。だから分かる。
こいつ自体はそんなに強くない。【なりすまし】も対峙している今使われても問題はない。
逃げるか捕まえるか。勝てる可能性があるなら捕まえてアトラにでも引き渡すべきだ。
「ぐへへ」
なんだ?視界が霞む。
「どうしたぁ?ぐへっぐへ」
気がつくと目の前に奴がいた。いつのまに?
「ぐっ!」
慌てて蹴りを出す。
物にあたった感触がなかった、あるのは右肩への痛み。血が出ていた。
「まずは右肩!ぐへへへへ!」
何だ、一体こいつどこから。
「ぐへへ」
背中に奴の影。今度は後ろか!?なら……
振り返り様に、影とは反対側の何も無い空間に蹴りを入れる、感触はない。
「ぐへっへへ!騙されたぁ!騙されたぁ!!」
今度は本物!?左腕を狙ってのナイフ攻撃、皮膚を掠る。
黒ローブ男の姿はもうない。
なら、でたらめに炎を放つ。低級魔法だから詠唱は短くていい、相手の場所が特定できれば。
全ての炎が消散した。
「ぐふふ、初心者にしてはなかなか考えてるがぁ、甘ぇなぁ!
そんなカス魔法、オラにきくかよぉ!」
勘、今度は上から。避けきる。
こいつ、やる気になれば俺を殺せるくせに遊んでやがる!
急に外が騒がしくなった。
地面が揺れる。続いて馬鹿でかい長い、長い唸り声。
轟音、悲鳴。外で何が起きている?
「どうやら【邪眼】の方は、成功したみてぇだな、ぐへへ。
とすると、さっさと作戦を実行しないと、【無常】様に叱られちまうなぁ!」
声だけが聞こえる。姿は無い。
「最後にいいプレゼントをくれてやるよぉ!
この幻惑から自力で抜け出せた奴はいない、苦しめ 苦しめぇ!ぐへへっへへ!」
視界が暗転する、思考が保てない、何を……
「死、絶望、虚無を味わった体がどうなるか、楽しみだなぁ!
小一時間もしたら、ぐふぐへへ」
アルル大峡谷での戦争。怒りのみの感情が支配する場。
死ぬ 皆死ぬ。
スンラとヘロがいた。お互いに殺しあっている。
ヤミハルがいた。兜ごと首が転げ落ちた。
クサモチがいた。肉が裂けバラバラになった。
アトラがいた。絶叫しながら燃え尽きた。
受付のお姉さんがいた。爆発して内臓が吹き飛んだ。
俺がいた。皆を殺していた。
違う、あれは俺じゃない。俺にあんな強さは無い。
でも……俺が殺したも同然じゃないか?
死んでいく。俺が弱かったから。俺は何もしていない。俺は何も出来ない。俺が殺した。俺が。
手を延ばす あと少し あと すこ し
自分の 身体に 両手を!
シュッと短い音、視界が廊下に戻る。【ゼロ:B】の効果、自分に掛けられた魔法の無効化。
頭がくらくらする。幻惑のダメージがひどい。
両手は離せない。【ゼロ:B】は両手を常につけていないと発動できない。
城の中も騒がしい、俺はどれくらいここにいたんだろう?
21.風
2007年2月28日『王の間レース』の記録が最初の階段に更新されたとき、ついに俺の【体術:C】が戻ってきた。
しかしこいつら相当暇なんだろうか。律儀に俺の相手をしてくれる。顔見知りも出来てしまった。
王の間レースが終わった後は自由に城の中を歩き回る事が出来た。
全く持ってアトラ様々だ。王の権力はものすごい。
今日は雷魔法のイメージが掴みにくいのでクサモチに会いに行く予定だった。
まともに教えてくれるとは思えないが。
「ん?」
クサモチが廊下を歩いていた。あいつにしては珍しい、多少早足だ。
向かう先は王の間、今日は見張りの当番じゃなかったのか?……さぼりか?
……ちょうどいい、【ゼロ:B】を実戦で試すときだ。
いくらクサモチと言えども魔力を封じられたら赤子も同然。
今までの恨み、晴らしてやる。
隙だらけだ、気取られないように近づく。
後ろから首を両手で掴んだ、瞬間、
クサモチの体から、シュウッという短い音とつむじ風が発生した。
しかし
そこに立っていたのは もう、クサモチではなかった。
「ぐへへ、なんだおめぇ、さっきから後ろでコソコソやってると思ったら
オラの【なりすまし】を解くとはなかなかやるじゃねぇか、ぐへへへへ。
そんでよぉ、覚悟はできてるのかぁ?」
しかしこいつら相当暇なんだろうか。律儀に俺の相手をしてくれる。顔見知りも出来てしまった。
王の間レースが終わった後は自由に城の中を歩き回る事が出来た。
全く持ってアトラ様々だ。王の権力はものすごい。
今日は雷魔法のイメージが掴みにくいのでクサモチに会いに行く予定だった。
まともに教えてくれるとは思えないが。
「ん?」
クサモチが廊下を歩いていた。あいつにしては珍しい、多少早足だ。
向かう先は王の間、今日は見張りの当番じゃなかったのか?……さぼりか?
……ちょうどいい、【ゼロ:B】を実戦で試すときだ。
いくらクサモチと言えども魔力を封じられたら赤子も同然。
今までの恨み、晴らしてやる。
隙だらけだ、気取られないように近づく。
後ろから首を両手で掴んだ、瞬間、
クサモチの体から、シュウッという短い音とつむじ風が発生した。
しかし
そこに立っていたのは もう、クサモチではなかった。
「ぐへへ、なんだおめぇ、さっきから後ろでコソコソやってると思ったら
オラの【なりすまし】を解くとはなかなかやるじゃねぇか、ぐへへへへ。
そんでよぉ、覚悟はできてるのかぁ?」
20.言
2007年2月27日それから暫く図書館引き篭もりが続いた
受付のお姉さんが心底哀れな顔をして来た。心読むんじゃねぇ!
引き篭もり生活を続けることによって水晶玉サイズの炎が出せるようになった。
【炎魔法:C】を習得できたわけだ。
(お祝いに受付のお姉さんが『中級者-上級者との圧倒的な差-』という本をプレゼントしてくれた。
きっと他意はないんだろう……うん。)
ついでに【ゼロ:B】の効果もわかった。
魔法力の強さを測る水晶を使おうと思い、両手で掴みあげてみたらただのくすんだ玉になった。
(受付のお姉さんには「壊しましたね!!」としつこく怒られた)
片手では普通に発動したのでどうやら『両手で掴むと魔力を無効化する』能力みたいだ。
引き篭もり後はヤミハルの言葉を大切にして体術の修行もしている。
主に『王の間までレース』でだ。記録は城の門を突破するまで伸びた。
ヤミハル、クサモチは基本的に留守がちだった。まぁ会っても暫く戦いたくないが。
クサモチとはそれなりに仲良くなったつもりだ。
(あのークサモチさん。魔法教えてもらいたいんですが。あのー……
おいてめぇこの腐り餅が!さっさとおしえろうわああごめんごめんごめんなさい!!)
ヤミハルは兜を取ろうとしただけでドラゴンに俺の頭を毟り取らせようとしたので仲良くなる気は毛頭無い。
まぁ、そんな、単純だけど、楽しい日々が続いていたわけだ。
あの時までは。
受付のお姉さんが心底哀れな顔をして来た。心読むんじゃねぇ!
引き篭もり生活を続けることによって水晶玉サイズの炎が出せるようになった。
【炎魔法:C】を習得できたわけだ。
(お祝いに受付のお姉さんが『中級者-上級者との圧倒的な差-』という本をプレゼントしてくれた。
きっと他意はないんだろう……うん。)
ついでに【ゼロ:B】の効果もわかった。
魔法力の強さを測る水晶を使おうと思い、両手で掴みあげてみたらただのくすんだ玉になった。
(受付のお姉さんには「壊しましたね!!」としつこく怒られた)
片手では普通に発動したのでどうやら『両手で掴むと魔力を無効化する』能力みたいだ。
引き篭もり後はヤミハルの言葉を大切にして体術の修行もしている。
主に『王の間までレース』でだ。記録は城の門を突破するまで伸びた。
ヤミハル、クサモチは基本的に留守がちだった。まぁ会っても暫く戦いたくないが。
クサモチとはそれなりに仲良くなったつもりだ。
(あのークサモチさん。魔法教えてもらいたいんですが。あのー……
おいてめぇこの腐り餅が!さっさとおしえろうわああごめんごめんごめんなさい!!)
ヤミハルは兜を取ろうとしただけでドラゴンに俺の頭を毟り取らせようとしたので仲良くなる気は毛頭無い。
まぁ、そんな、単純だけど、楽しい日々が続いていたわけだ。
あの時までは。
19.急
2007年2月27日フォロッサ城入り口に到着。
ご丁寧に門番が要る。
一人は鎧をつけた戦士、一人はローブを着ているので魔法使いだろう。両方とも基本的に線が細い。
ここはカイドだ。衆のような肉体派ばかりではないんだろう。
ま、俺にはこの手紙があるからな。
「おい、俺はアトラの客だ。読め」
ローブの男に手紙を手渡す。
胡散臭そうに見ていた男の顔が、手紙を見た途端に険しくなった。
間一髪
急に放たれた炎を避ける。
態勢を立て直した時にはもう遅かった。鎧の男の拳が迫る。
―――
そのまま羽交い絞めにされた俺は巨大な門の前に連れていかれ、部屋に投げ込まれた。
「てめーどういうつもりだ、アトラ!」
見上げる先、王の間で優雅に(格好は奇妙奇天烈だったが)笑っているアトラ。
「フォロッサ城の兵士に捕まらずに儂の部屋に来れるか、楽しいゲームじゃろ?
初回は3秒じゃな、記録しておこう」
「ふざけんなよ!嫌がらせのために呼んだのか!?」
「いやいや……お前の可能性が見たくてな。
ヤミハル、クサモチでてきてよいぞ。」
柱から全身鎧で覆われた男とドラゴン(どこにいたんだ?)と
エメラルドグリーンの髪で顔前面が覆われたいかにも根暗そうな男が出てきた。
ドラゴンのほうは前アトラを迎えに来た奴と同じだ。
「こいつらはカイドでも5本の指に入る使い手でな、
今日はこいつらと模擬戦をやってもらう。
図書館以外での貴重な経験じゃ、実戦から学ぶものも多かろう。」
アトラは儂の余興にもなるしな、と付け足した。この野郎。
「まずは、俺から。……はぁ。」
鎧男のほうが前に歩み出る。
ドラゴンのほうは確かに脅威だが、こいつ自体はそんなに対したことなさそうだ。
「全く……王の気まぐれといったら……」
「こんな……へぼ……はぁ……」
なんかぶつぶつ言ってんですけど。
「俺に一発でも攻撃を当てることが出来たら、お前の勝ちにしてやる。さっさと来い。」
な に さ ま だ ?
「そのトカゲがいなけりゃ何もできねぇクズの癖してなめてんじゃねえぞ!!」
さっきまで気合の欠片も入ってなかったヤミハルの体から負のオーラが出てきてしまった気がした。
「トカゲ……だと?」
「お前のような下衆とこの子を戦わせたらこの子が穢れる。
俺だけで十分だ。来い。」
その兜脱がして絶対ぶん殴ってやる。
兜で視覚になっている側面へ回り込む。
こんな重そうな鎧を着てるんだ、反応できるわけ……
身のこなしが軽い!?
ヤミハルは拳を極少ない動作で避け、腕を掴み、俺を床に叩きつけた。
「ぐふぇっ」
「はぁ……【体術:C】以下か……」
「体術は鍛えておいたほうが良い。
いくら魔法が強くても身のこなしがヘボだったり敵の攻撃を凌ぐ方法を知らなかったら
接近戦に持ち込まれたら終わりだ。
……どこぞの魔法使いのようになるぞ。」
「以上だ。」
敗北感……負けた上に助言された 悔しい!
「次はてめえだこの根暗やろおおおおおおおお!」
クサモチとやらに急襲。我ながら情けない。
「……近づかれる前に……殺す……」
雷撃
気づくと俺は『またいつでも来い』という手紙と一緒に道に転がっていた。
ご丁寧に門番が要る。
一人は鎧をつけた戦士、一人はローブを着ているので魔法使いだろう。両方とも基本的に線が細い。
ここはカイドだ。衆のような肉体派ばかりではないんだろう。
ま、俺にはこの手紙があるからな。
「おい、俺はアトラの客だ。読め」
ローブの男に手紙を手渡す。
胡散臭そうに見ていた男の顔が、手紙を見た途端に険しくなった。
間一髪
急に放たれた炎を避ける。
態勢を立て直した時にはもう遅かった。鎧の男の拳が迫る。
―――
そのまま羽交い絞めにされた俺は巨大な門の前に連れていかれ、部屋に投げ込まれた。
「てめーどういうつもりだ、アトラ!」
見上げる先、王の間で優雅に(格好は奇妙奇天烈だったが)笑っているアトラ。
「フォロッサ城の兵士に捕まらずに儂の部屋に来れるか、楽しいゲームじゃろ?
初回は3秒じゃな、記録しておこう」
「ふざけんなよ!嫌がらせのために呼んだのか!?」
「いやいや……お前の可能性が見たくてな。
ヤミハル、クサモチでてきてよいぞ。」
柱から全身鎧で覆われた男とドラゴン(どこにいたんだ?)と
エメラルドグリーンの髪で顔前面が覆われたいかにも根暗そうな男が出てきた。
ドラゴンのほうは前アトラを迎えに来た奴と同じだ。
「こいつらはカイドでも5本の指に入る使い手でな、
今日はこいつらと模擬戦をやってもらう。
図書館以外での貴重な経験じゃ、実戦から学ぶものも多かろう。」
アトラは儂の余興にもなるしな、と付け足した。この野郎。
「まずは、俺から。……はぁ。」
鎧男のほうが前に歩み出る。
ドラゴンのほうは確かに脅威だが、こいつ自体はそんなに対したことなさそうだ。
「全く……王の気まぐれといったら……」
「こんな……へぼ……はぁ……」
なんかぶつぶつ言ってんですけど。
「俺に一発でも攻撃を当てることが出来たら、お前の勝ちにしてやる。さっさと来い。」
な に さ ま だ ?
「そのトカゲがいなけりゃ何もできねぇクズの癖してなめてんじゃねえぞ!!」
さっきまで気合の欠片も入ってなかったヤミハルの体から負のオーラが出てきてしまった気がした。
「トカゲ……だと?」
「お前のような下衆とこの子を戦わせたらこの子が穢れる。
俺だけで十分だ。来い。」
その兜脱がして絶対ぶん殴ってやる。
兜で視覚になっている側面へ回り込む。
こんな重そうな鎧を着てるんだ、反応できるわけ……
身のこなしが軽い!?
ヤミハルは拳を極少ない動作で避け、腕を掴み、俺を床に叩きつけた。
「ぐふぇっ」
「はぁ……【体術:C】以下か……」
「体術は鍛えておいたほうが良い。
いくら魔法が強くても身のこなしがヘボだったり敵の攻撃を凌ぐ方法を知らなかったら
接近戦に持ち込まれたら終わりだ。
……どこぞの魔法使いのようになるぞ。」
「以上だ。」
敗北感……負けた上に助言された 悔しい!
「次はてめえだこの根暗やろおおおおおおおお!」
クサモチとやらに急襲。我ながら情けない。
「……近づかれる前に……殺す……」
雷撃
気づくと俺は『またいつでも来い』という手紙と一緒に道に転がっていた。
3日ほど大図書館に篭りきりだった。
受け付けのお姉さんとも仲良くなった。
(―え?丸一日練習しても炎がでないんですか? ちゃんとこの本の言う通りにしましたか?
おかしいですね……これは初心者でも理解できるはずなんですが……
あ、そんな落ち込まないで下さい。分かりました、私が教えます。いいですか、これは……
この人相手だと会話がいらない。どうやら彼女は【読心術:A】を持っているらしい。
3日間の苦労あってようやく手のひらにマッチの火大の炎が出せるようになった。
スキルレベルアップ:炎魔法【C】はでなかった。こんなもの魔法のうちに入らないということなのか。
4日目、ふと気になったことがあったので聞いてみた。
「お姉さん、スキル:【ゼロ】について何か知りませんか?
適当に魔法書を漁ってみたんですが載ってなくて。」
「【ゼロ】、ですか?聞いたことないですね……
ちょっと待ってください。今【検索】かけますから。」
彼女はそういって目を瞑り、まるで神に祈るかのように手を合わせた。
「深いですね……あ、ありました。」
目を瞑ってから10分後、ついて来てください、とだけ言って歩きだした。
図書館の奥は再現なく続いていく。
聞いたところによると空間操作系の魔法が掛かっているそうだ。
今後の勉強になると思ってよく見ておいたがさっぱり分からなかった。笑われた。
1時間ぐらい歩いたころ、やっと受付のお姉さんが立ち止まって本棚に手を伸ばした。
1冊の本を取る。表紙はぼろぼろで全体的に黄ばんでいる。
「これですね……相当古い本ですが。はい、どうぞ。」
本は日記形式になっていた。
『私の友人が【ゼロ】というスキルを持っている事が分かった。
前例が見つからないので細かな事はわからないが、【ゼロ:C】はどうやら「不可能を可能にする」能力のようだ。
しかし彼は副作用を知らなかった。いや、知りえなかったのだ。
彼は好奇心に押されて【ゼロ】を使いつづけた。
枯れない花を作った。腐らないパンを作った。呪いのアイテムを作った。
ある日彼は階段で転んだ。
彼は武道派だったので階段で転ぶこと自体珍しかったのだが、受身も取れずに落ちていった。
彼は気づかなかったのだ。彼の肉体の能力の何もかもが1になっていたことに。
そして体力、いわゆるHPというものの最大値までもが1になっていた事に。
【ゼロ】を持つものよ、気をつけろ。これはその身を滅ぼす技。
使い方を間違えてはならない。』
「……」
「大変な、スキルですね……」
―――
図書館に篭ってから1週間後、アトラから城へのお誘いの手紙が届いた。
「この手紙を見せれば城に入れる。来たいときにいつでもこい。」
だそうだ。
奴がどうやって俺の居場所を知ったのか、不思議な事は色々あるがきっとそれも魔法やスキルなんだろう。
このころには俺はビー球サイズの炎を出せるようになっていた。
行って見るか。
受け付けのお姉さんとも仲良くなった。
(―え?丸一日練習しても炎がでないんですか? ちゃんとこの本の言う通りにしましたか?
おかしいですね……これは初心者でも理解できるはずなんですが……
あ、そんな落ち込まないで下さい。分かりました、私が教えます。いいですか、これは……
この人相手だと会話がいらない。どうやら彼女は【読心術:A】を持っているらしい。
3日間の苦労あってようやく手のひらにマッチの火大の炎が出せるようになった。
スキルレベルアップ:炎魔法【C】はでなかった。こんなもの魔法のうちに入らないということなのか。
4日目、ふと気になったことがあったので聞いてみた。
「お姉さん、スキル:【ゼロ】について何か知りませんか?
適当に魔法書を漁ってみたんですが載ってなくて。」
「【ゼロ】、ですか?聞いたことないですね……
ちょっと待ってください。今【検索】かけますから。」
彼女はそういって目を瞑り、まるで神に祈るかのように手を合わせた。
「深いですね……あ、ありました。」
目を瞑ってから10分後、ついて来てください、とだけ言って歩きだした。
図書館の奥は再現なく続いていく。
聞いたところによると空間操作系の魔法が掛かっているそうだ。
今後の勉強になると思ってよく見ておいたがさっぱり分からなかった。笑われた。
1時間ぐらい歩いたころ、やっと受付のお姉さんが立ち止まって本棚に手を伸ばした。
1冊の本を取る。表紙はぼろぼろで全体的に黄ばんでいる。
「これですね……相当古い本ですが。はい、どうぞ。」
本は日記形式になっていた。
『私の友人が【ゼロ】というスキルを持っている事が分かった。
前例が見つからないので細かな事はわからないが、【ゼロ:C】はどうやら「不可能を可能にする」能力のようだ。
しかし彼は副作用を知らなかった。いや、知りえなかったのだ。
彼は好奇心に押されて【ゼロ】を使いつづけた。
枯れない花を作った。腐らないパンを作った。呪いのアイテムを作った。
ある日彼は階段で転んだ。
彼は武道派だったので階段で転ぶこと自体珍しかったのだが、受身も取れずに落ちていった。
彼は気づかなかったのだ。彼の肉体の能力の何もかもが1になっていたことに。
そして体力、いわゆるHPというものの最大値までもが1になっていた事に。
【ゼロ】を持つものよ、気をつけろ。これはその身を滅ぼす技。
使い方を間違えてはならない。』
「……」
「大変な、スキルですね……」
―――
図書館に篭ってから1週間後、アトラから城へのお誘いの手紙が届いた。
「この手紙を見せれば城に入れる。来たいときにいつでもこい。」
だそうだ。
奴がどうやって俺の居場所を知ったのか、不思議な事は色々あるがきっとそれも魔法やスキルなんだろう。
このころには俺はビー球サイズの炎を出せるようになっていた。
行って見るか。
17.迎
2007年2月27日「ここにいらしたんですか、アトラ様」
俺たちの前に突如としてブラックドラゴンが舞い降りた。
ドラゴンテイマーというやつなんだろう。カイドではそう珍しくないのか通行人も驚かない。
「まったく……、ちょっとは王の座に座っていてください。帰りますよ。」
全身黒い鱗の鎧で覆われてて顔は見えないがカイド国の兵士のようだ。
アトラのお迎え、と言ったところだろう。
「どうやらお別れじゃな。楽しかったぞ。」
屈託なく笑いながらアトラは言う。本当にこういう表情ばかりだ。
「おう、俺もな。お前は良い奴だったぜアトラ。」
ドラゴン野郎が俺のことをにらんだ気がしたが、何せ顔が見えない。気にしない。
ブラックドラゴンはアトラを乗せて高くそびえ立つフォロッサ城の頂上へと飛び去っていった。
さて、まともな格好の服を買わなきゃ……
―再び魔法訓練所
買った服は安かったので防寒性はあまりよくないが町を歩く分には十分だ。
プラス「ポッカポカイロ君」を買った。微弱だが暖かい。
俺はその足でまた魔法訓練所に向かうことにした。
「おかしいですね……さっきは確かに素質0の判定がでたはずなんですが……
一般人より低いレベルですが、確かに、魔法を理解する素質はあります。
……おめでとうございます。カイドでたくさん魔法を自分のものにしてください。」
係員のねーちゃんが言うにはこのレベルで魔法を習得するにはとても苦労するという。
やってやるさ!
基礎を勉強するにはフォロッサ大図書館がいいと教えてもらった。
なんでもほぼ全ての魔法書はここにそろっているとか。その上深部には謎が多く危険らしい。
フォロッサ大図書館はフォロッサの建物の中で一番でかかった。
大半が地下に埋まっているみたいだが。
流石大図書館というだけあって受け付け自体が広い。
建物の中も奥が見えない。魔法でもかかってるのだろうか。
「あの、超魔法についてかかれている文献はありませんか?」
なるべくタイプの受付のお姉さんに聞く。
「あ、はい!
初心者のための魔法講座の本シリーズなら向かって左側のコーナーですね!」
「い、いや、あの、俺は」
「がんばって魔法を覚えてくださいね!フォロッサ大図書館はいつでもあなたの味方です!」
なにこの人……
「魔法の基礎は、その魔法を頭の中でイメージすることが大切です、なるほど……
例えば炎系の魔法なら、火をイメージする、ということになります、ふむふむ……
例えば炎系の魔法なら あ、おんなじとこよんだクソ
同属性の魔法には何種類もあります。その魔法をどのように使い分けるのか。
その魔法というのが具体的に理解できるようになって初めて使う事ができるのです。
魔法詠唱もその区別の一つで、イメージを膨らませ同時に個別化することに役立ちます。
え?なんだって? イメージを膨らませて同時に個別化。
あの、ちょっといいですか?え?さっきからぶつぶつうるさい黙れだと?なんだとてめー
あ、いやなんでもないです。えっとここの『個別化』って何ですか。
てめぇええええ俺様を侮辱しやがったなこの
あ、受付のお姉さん いや違うんです これは いやえっと ちょっとまって!!」
勉強って楽しい!
俺たちの前に突如としてブラックドラゴンが舞い降りた。
ドラゴンテイマーというやつなんだろう。カイドではそう珍しくないのか通行人も驚かない。
「まったく……、ちょっとは王の座に座っていてください。帰りますよ。」
全身黒い鱗の鎧で覆われてて顔は見えないがカイド国の兵士のようだ。
アトラのお迎え、と言ったところだろう。
「どうやらお別れじゃな。楽しかったぞ。」
屈託なく笑いながらアトラは言う。本当にこういう表情ばかりだ。
「おう、俺もな。お前は良い奴だったぜアトラ。」
ドラゴン野郎が俺のことをにらんだ気がしたが、何せ顔が見えない。気にしない。
ブラックドラゴンはアトラを乗せて高くそびえ立つフォロッサ城の頂上へと飛び去っていった。
さて、まともな格好の服を買わなきゃ……
―再び魔法訓練所
買った服は安かったので防寒性はあまりよくないが町を歩く分には十分だ。
プラス「ポッカポカイロ君」を買った。微弱だが暖かい。
俺はその足でまた魔法訓練所に向かうことにした。
「おかしいですね……さっきは確かに素質0の判定がでたはずなんですが……
一般人より低いレベルですが、確かに、魔法を理解する素質はあります。
……おめでとうございます。カイドでたくさん魔法を自分のものにしてください。」
係員のねーちゃんが言うにはこのレベルで魔法を習得するにはとても苦労するという。
やってやるさ!
基礎を勉強するにはフォロッサ大図書館がいいと教えてもらった。
なんでもほぼ全ての魔法書はここにそろっているとか。その上深部には謎が多く危険らしい。
フォロッサ大図書館はフォロッサの建物の中で一番でかかった。
大半が地下に埋まっているみたいだが。
流石大図書館というだけあって受け付け自体が広い。
建物の中も奥が見えない。魔法でもかかってるのだろうか。
「あの、超魔法についてかかれている文献はありませんか?」
なるべくタイプの受付のお姉さんに聞く。
「あ、はい!
初心者のための魔法講座の本シリーズなら向かって左側のコーナーですね!」
「い、いや、あの、俺は」
「がんばって魔法を覚えてくださいね!フォロッサ大図書館はいつでもあなたの味方です!」
なにこの人……
「魔法の基礎は、その魔法を頭の中でイメージすることが大切です、なるほど……
例えば炎系の魔法なら、火をイメージする、ということになります、ふむふむ……
例えば炎系の魔法なら あ、おんなじとこよんだクソ
同属性の魔法には何種類もあります。その魔法をどのように使い分けるのか。
その魔法というのが具体的に理解できるようになって初めて使う事ができるのです。
魔法詠唱もその区別の一つで、イメージを膨らませ同時に個別化することに役立ちます。
え?なんだって? イメージを膨らませて同時に個別化。
あの、ちょっといいですか?え?さっきからぶつぶつうるさい黙れだと?なんだとてめー
あ、いやなんでもないです。えっとここの『個別化』って何ですか。
てめぇええええ俺様を侮辱しやがったなこの
あ、受付のお姉さん いや違うんです これは いやえっと ちょっとまって!!」
勉強って楽しい!
16.三
2007年2月27日アトラ王?この服装、性格すべてが奇抜な女が?
でも不思議と嘘だという気はしなかった。
こいつが王なら、国民も安心して国を任せられる。
「そうじゃの。儂の持つ賢者の石を使えば、
お主に魔法の素質を芽生えさせることぐらいはできるかもしれんのう?」
にやけながら
「どうする?お主が望むのなら考えてやってもいいぞ。」
俺の目をまっすぐ見て。
でも、俺は
「嫌だ。」
多分声は震えていたと思う。
アトラは表情を変えない。
「お主の望みがかなうんじゃぞ?
これに頼らなければもうチャンスは無いかも知れん。
それでもか?」
「嫌だっ……俺はそんなものには頼らない!
俺は 俺の 俺自身の力で 魔法を 習得してやる!!!」
アトラの、満足そうな顔。
声は震えつづけている。
そうだ 人だって 空を飛べた。飛行機というものを開発して。
ここは ゲームの世界。 できないことは ない。
不可能を可能にすることだって できるはずだ!!
スキルレベルアップ:ゼロ【B】
!!!
確信。
「おいアトラ!そこ動くんじゃねぇぞ!三分程度で戻る!」
店に入る。一番シンプルなのを適当にパクる。
読む。できる。理解、できる。
嬉しさのあまりドアに体当たりして外にでる。肩が痛い。超楽しい。超笑顔。
「おいアトラ!見ろ、この変態女め!
俺だってなぁ、やればできるんだぞ!?」
「?気でも狂ったか?」
「なに馬鹿いってんだおまえ わかんねぇのか?
魔法を使ってるんだよ!!確信した!俺はもう素質0じゃない!!」
満開の笑顔で答える俺にアトラはちょっと戸惑っているようだ。
「……どんな魔法じゃ?」
「どんなぶっちょう面でも笑顔になれる魔法」
「……」
「はっはっはー!俺はもう 魔法が使えるんだ!!!」
通行人から奇異の目で見られる。気にしない!俺は俺の道へいける!!
正直今楽しいから笑顔なのか魔法が使えてるのか、判別できないだろう。
でも確かにそこには確信があった。
暫く雪の上で転げまわりながら一笑いして、立ち上がる。
アトラは多少呆れていたがそこにいた。お前は良い奴だよ。
「落ち着いたかの?」
「おうよ、ウルトン様絶好調よ。
ところでアトラ、スキル【ゼロ】ってなんだ?
さっきレベルアップしたみたいなんだけど、これが魔法が使えるようになった原因か?
以前スキル:確認したときはこんなもの無かったはずなんだが……」
「儂も詳しくは知らんが、隠しスキルの一種だろう。
スキル:確認:ゼロ と思い浮かべてみるんじゃな。
言われたとおりに思い浮かべてみる。
「うお!まじだ!でたでた!すげー!」
ふとここで違和感、スキル:確認を実行
「あれ、【体術:C】なくなってんだけど……
「スキル【ゼロ】とやらの副作用かの?
「……まじで?
しれっと言ってくれる。こいつはほんとに……
でも不思議と嘘だという気はしなかった。
こいつが王なら、国民も安心して国を任せられる。
「そうじゃの。儂の持つ賢者の石を使えば、
お主に魔法の素質を芽生えさせることぐらいはできるかもしれんのう?」
にやけながら
「どうする?お主が望むのなら考えてやってもいいぞ。」
俺の目をまっすぐ見て。
でも、俺は
「嫌だ。」
多分声は震えていたと思う。
アトラは表情を変えない。
「お主の望みがかなうんじゃぞ?
これに頼らなければもうチャンスは無いかも知れん。
それでもか?」
「嫌だっ……俺はそんなものには頼らない!
俺は 俺の 俺自身の力で 魔法を 習得してやる!!!」
アトラの、満足そうな顔。
声は震えつづけている。
そうだ 人だって 空を飛べた。飛行機というものを開発して。
ここは ゲームの世界。 できないことは ない。
不可能を可能にすることだって できるはずだ!!
スキルレベルアップ:ゼロ【B】
!!!
確信。
「おいアトラ!そこ動くんじゃねぇぞ!三分程度で戻る!」
店に入る。一番シンプルなのを適当にパクる。
読む。できる。理解、できる。
嬉しさのあまりドアに体当たりして外にでる。肩が痛い。超楽しい。超笑顔。
「おいアトラ!見ろ、この変態女め!
俺だってなぁ、やればできるんだぞ!?」
「?気でも狂ったか?」
「なに馬鹿いってんだおまえ わかんねぇのか?
魔法を使ってるんだよ!!確信した!俺はもう素質0じゃない!!」
満開の笑顔で答える俺にアトラはちょっと戸惑っているようだ。
「……どんな魔法じゃ?」
「どんなぶっちょう面でも笑顔になれる魔法」
「……」
「はっはっはー!俺はもう 魔法が使えるんだ!!!」
通行人から奇異の目で見られる。気にしない!俺は俺の道へいける!!
正直今楽しいから笑顔なのか魔法が使えてるのか、判別できないだろう。
でも確かにそこには確信があった。
暫く雪の上で転げまわりながら一笑いして、立ち上がる。
アトラは多少呆れていたがそこにいた。お前は良い奴だよ。
「落ち着いたかの?」
「おうよ、ウルトン様絶好調よ。
ところでアトラ、スキル【ゼロ】ってなんだ?
さっきレベルアップしたみたいなんだけど、これが魔法が使えるようになった原因か?
以前スキル:確認したときはこんなもの無かったはずなんだが……」
「儂も詳しくは知らんが、隠しスキルの一種だろう。
スキル:確認:ゼロ と思い浮かべてみるんじゃな。
言われたとおりに思い浮かべてみる。
「うお!まじだ!でたでた!すげー!」
ふとここで違和感、スキル:確認を実行
「あれ、【体術:C】なくなってんだけど……
「スキル【ゼロ】とやらの副作用かの?
「……まじで?
しれっと言ってくれる。こいつはほんとに……
15.王
2007年2月27日フォロッサのあるロフ島までは船で移動することになった。
エターナを出発したのが昼過ぎだったので、モエリに着いたころにはもう日は沈んでいた。
本当はフォロッサに直行したかったのだけれどもフォロッサには港が無い。
乗客に話を聞いたところ昔リヴァイアサンとかいう化け物が暴れて壊滅してしまったらしい。
たかがヘビモンスターにやられるなんて……情けない。
魔法が使えない俺はもっと情けない。
「はぁ……」
今の俺には憎まれ口を叩く元気も無いようだ。
朝までまてばフォロッサ行きの馬車でもでるだろうが今の俺はそんな気分じゃない。
歩く 歩く ひたすら歩く。
結局丸一日歩く羽目になった。
俺の隣をフォロッサ行きの馬車が通ってった。むかつくから石を投げてやった。
積荷のツボが飛んできて俺の頭部に命中した。
痛みの変わりに薬草を手に入れることができた。
ついにフォロッサに到着。
さすが王都、エターナとは比べ物にならないほどにでかい。
そして比べ物にならないくらい寒い。寒いんです。
まずはフォロッサの魔法訓練所に向かった。
大きな研究所なら結果は違うかもしれないと思ったからだ。希望は捨てきれない。
結果はエターナと同じだった。わかってたさ……
もしかしたらフォロッサ城で検査すれば違った結果が出るんじゃないだろうかとも思ったが
何はともあれ防寒具を探す。
お金はほとんどないがこんな薄着な迷える子羊を見かけたら
誰だって防寒具の一つや二つぐらいくれるだろう。
曲がり角を3度ほど曲がると服専門店を発見したので入ってみると異様な光景が広がっていた。
迷彩服・きぐるみ・袖なしジャケット・バニーセット などなど
まともな服が一つも無い。
「似合うのう、あ、ちょっとそれ取ってくれんか?」
女か?向こうの試着室から声が聞こえてきた。
こんなところで服を選ぶなんて馬鹿げてるんじゃないか。
というか店員こっちに気づけよ。無視すんな。
「あのすみませ……うわっ!?」
試着室のほうから何かが飛んできた。なんだこれ……下駄ローラーブレード!?
「ああすまんの、なかなかうまく履けなくてな」
試着室からでてきた女が言った。
何だこの女……奇抜とかもうそんなレベルではない。
上から葉っぱを寄せ集めたような帽子、ピンクの襟巻き、派手なピエロ服
それにさっきの下駄ローラーブレードだ。
元がいくら良い女でもこうなったらもう……
「あぶねぇな気をつけろよ!この変態!」
「変態じゃと!?儂のセンスがわからんのかこのクズが!」
「てめぇ俺を馬鹿にすんのか!?生意気な、いいだろう俺のセンスを見せてやる!」
結果二人の変態が出来上がったわけだ。
服の代金は変態女が払ってくれた。俺のセンスに甚く感動したらしい。
「お主、カイドは初めてじゃろう?」
「なんでそれがわかるんだよ。」
「そんな薄着でカイドに来る奴はおらん。
どれ、儂がベストな店を案内してやろう。」
「てめーのセンスのベストだからな……信用ならねぇな……」
他の服屋や珍妙な食べ物屋、怪しげな雑貨屋などいろいろ回った。
笑ったりはしゃいだり、この女といるのは楽しかった。退屈しない。
だいぶ時間がたった後、いわゆる『魔法雑貨屋』にたどり着いた。
「ここの魔法はおもしろいのがたくさんあるぞ!
無償にじゃんけんがしたくなる魔法や開脚前転をすると足が攣る魔法やら……」
「俺は、いい」
「ん?」
「どうせそれも魔法の素質がねぇとつかえねえんだろ?
見たってむなしくなるだけだ。」
こいつにあたっても仕方ないのに。
「なんじゃお主魔法が使えんのか?
じゃあ何のためにカイドにきたんじゃ。」
心底不思議そうな顔。気楽でいいよな。
「魔法を習いにだよ!!それがliveでの目標だったんだ!!」
「……何もしないで諦めるのか?」
簡単に言ってくれる。まるで何も不可能を知らないような、そんな目をして。
「才能0なんだから仕方ねーだろ!!!俺だって悔しいんだ!!!
「なるほど……ふふ」
不敵に笑う。なんだこいつ。ものすごい威圧感。
「賢者の石、つかってみるか?」
「は?」
こいつ、何言って……?
「儂の名はアトラ。フォロッサ国王 アトラ王じゃ。」
緑の髪の、ピエロが笑う……
エターナを出発したのが昼過ぎだったので、モエリに着いたころにはもう日は沈んでいた。
本当はフォロッサに直行したかったのだけれどもフォロッサには港が無い。
乗客に話を聞いたところ昔リヴァイアサンとかいう化け物が暴れて壊滅してしまったらしい。
たかがヘビモンスターにやられるなんて……情けない。
魔法が使えない俺はもっと情けない。
「はぁ……」
今の俺には憎まれ口を叩く元気も無いようだ。
朝までまてばフォロッサ行きの馬車でもでるだろうが今の俺はそんな気分じゃない。
歩く 歩く ひたすら歩く。
結局丸一日歩く羽目になった。
俺の隣をフォロッサ行きの馬車が通ってった。むかつくから石を投げてやった。
積荷のツボが飛んできて俺の頭部に命中した。
痛みの変わりに薬草を手に入れることができた。
ついにフォロッサに到着。
さすが王都、エターナとは比べ物にならないほどにでかい。
そして比べ物にならないくらい寒い。寒いんです。
まずはフォロッサの魔法訓練所に向かった。
大きな研究所なら結果は違うかもしれないと思ったからだ。希望は捨てきれない。
結果はエターナと同じだった。わかってたさ……
もしかしたらフォロッサ城で検査すれば違った結果が出るんじゃないだろうかとも思ったが
何はともあれ防寒具を探す。
お金はほとんどないがこんな薄着な迷える子羊を見かけたら
誰だって防寒具の一つや二つぐらいくれるだろう。
曲がり角を3度ほど曲がると服専門店を発見したので入ってみると異様な光景が広がっていた。
迷彩服・きぐるみ・袖なしジャケット・バニーセット などなど
まともな服が一つも無い。
「似合うのう、あ、ちょっとそれ取ってくれんか?」
女か?向こうの試着室から声が聞こえてきた。
こんなところで服を選ぶなんて馬鹿げてるんじゃないか。
というか店員こっちに気づけよ。無視すんな。
「あのすみませ……うわっ!?」
試着室のほうから何かが飛んできた。なんだこれ……下駄ローラーブレード!?
「ああすまんの、なかなかうまく履けなくてな」
試着室からでてきた女が言った。
何だこの女……奇抜とかもうそんなレベルではない。
上から葉っぱを寄せ集めたような帽子、ピンクの襟巻き、派手なピエロ服
それにさっきの下駄ローラーブレードだ。
元がいくら良い女でもこうなったらもう……
「あぶねぇな気をつけろよ!この変態!」
「変態じゃと!?儂のセンスがわからんのかこのクズが!」
「てめぇ俺を馬鹿にすんのか!?生意気な、いいだろう俺のセンスを見せてやる!」
結果二人の変態が出来上がったわけだ。
服の代金は変態女が払ってくれた。俺のセンスに甚く感動したらしい。
「お主、カイドは初めてじゃろう?」
「なんでそれがわかるんだよ。」
「そんな薄着でカイドに来る奴はおらん。
どれ、儂がベストな店を案内してやろう。」
「てめーのセンスのベストだからな……信用ならねぇな……」
他の服屋や珍妙な食べ物屋、怪しげな雑貨屋などいろいろ回った。
笑ったりはしゃいだり、この女といるのは楽しかった。退屈しない。
だいぶ時間がたった後、いわゆる『魔法雑貨屋』にたどり着いた。
「ここの魔法はおもしろいのがたくさんあるぞ!
無償にじゃんけんがしたくなる魔法や開脚前転をすると足が攣る魔法やら……」
「俺は、いい」
「ん?」
「どうせそれも魔法の素質がねぇとつかえねえんだろ?
見たってむなしくなるだけだ。」
こいつにあたっても仕方ないのに。
「なんじゃお主魔法が使えんのか?
じゃあ何のためにカイドにきたんじゃ。」
心底不思議そうな顔。気楽でいいよな。
「魔法を習いにだよ!!それがliveでの目標だったんだ!!」
「……何もしないで諦めるのか?」
簡単に言ってくれる。まるで何も不可能を知らないような、そんな目をして。
「才能0なんだから仕方ねーだろ!!!俺だって悔しいんだ!!!
「なるほど……ふふ」
不敵に笑う。なんだこいつ。ものすごい威圧感。
「賢者の石、つかってみるか?」
「は?」
こいつ、何言って……?
「儂の名はアトラ。フォロッサ国王 アトラ王じゃ。」
緑の髪の、ピエロが笑う……
14.都
2007年2月20日唖然呆然前後不覚
たくさん人にぶつかったような気がする。
気づいたら港にいた。
―ぜ、ぜろって!?つ、つまり?
―そうですね、簡単に言うと飛べない鳥、っているでしょう?
―……
―もっと分かりやすく言えばですね、人の背中には羽が生えていないでしょう?
―……
何が魔法を習うだよ、何が守る側になりたいだよ、馬鹿か、馬鹿だよ。
……目標、なくなったなぁ。
これから、何しよう。
水って気持ちよさそうだなぁ。
…………………
海に飛び込む。
気持ちいい。
冷たい水は頭を冷やしてくれた。冷静になれる。
そして気づく。
俺泳げなかった!!!!!
「ぐごごがぼはっうぇぁ誰かたすけてがぼはたすけてええええ」
エターナ港の周辺にいた人たちに引っ張りあげてもらう。
「さっさと助けろこのクズどもが!」
クズは俺でしたごめんなさいごめんなさい。
カイドの王都、フォロッサに行こう。
悩むのはそれからでも遅くない。
今にも殴りかかってきそうな、俺にクズ呼ばわりされた人たちに囲まれながらそんな事を考えていた。
たくさん人にぶつかったような気がする。
気づいたら港にいた。
―ぜ、ぜろって!?つ、つまり?
―そうですね、簡単に言うと飛べない鳥、っているでしょう?
―……
―もっと分かりやすく言えばですね、人の背中には羽が生えていないでしょう?
―……
何が魔法を習うだよ、何が守る側になりたいだよ、馬鹿か、馬鹿だよ。
……目標、なくなったなぁ。
これから、何しよう。
水って気持ちよさそうだなぁ。
…………………
海に飛び込む。
気持ちいい。
冷たい水は頭を冷やしてくれた。冷静になれる。
そして気づく。
俺泳げなかった!!!!!
「ぐごごがぼはっうぇぁ誰かたすけてがぼはたすけてええええ」
エターナ港の周辺にいた人たちに引っ張りあげてもらう。
「さっさと助けろこのクズどもが!」
クズは俺でしたごめんなさいごめんなさい。
カイドの王都、フォロッサに行こう。
悩むのはそれからでも遅くない。
今にも殴りかかってきそうな、俺にクズ呼ばわりされた人たちに囲まれながらそんな事を考えていた。
13.スキル(12と交換)
2007年2月20日―――
「試験の結果を報告します。」
ドキドキ。果たして俺はどの魔法に適しているのか
やっぱり炎かな?いやいや雷ってのもいいんじゃないか?いや、ここは意外性で水ってのも……
「素質ないです。」
「え?」
「素質なしです。」
「なし、って……」
「はい。まったくのなしです。素質の欠片もありません。0です。0。」
―――
カイド国 エターナ
カイドの土地はちゃんと歩きたかったのでプロから一番近い場所にある街『エターナ』で馬車を降りた。
寒い。寒いぜ。防寒具を買うなんて考えもしなかった……
カイドの街には大小は様々だが魔法訓練所というのがあるらしい。
名前のとおり魔法の訓練もできるし、自分にあった魔法を検査することができる。
小さな街であるエターナにも例外なく訓練所を見つけることが出来た。
むしろエターナは港と訓練所以外には何もないといっても言いぐらいの規模の街だったが……
検査はペーパーテストから血液検査やらなんか変な液体のまされたりいろんなコトをさせられた。
うーん!魔法使いってみんなこんな風にしてたのかな!!
―――
カイドに向かっていたと思ったら衆についていた以上の衝撃の事実
魔法スキルの 素質 0
「試験の結果を報告します。」
ドキドキ。果たして俺はどの魔法に適しているのか
やっぱり炎かな?いやいや雷ってのもいいんじゃないか?いや、ここは意外性で水ってのも……
「素質ないです。」
「え?」
「素質なしです。」
「なし、って……」
「はい。まったくのなしです。素質の欠片もありません。0です。0。」
―――
カイド国 エターナ
カイドの土地はちゃんと歩きたかったのでプロから一番近い場所にある街『エターナ』で馬車を降りた。
寒い。寒いぜ。防寒具を買うなんて考えもしなかった……
カイドの街には大小は様々だが魔法訓練所というのがあるらしい。
名前のとおり魔法の訓練もできるし、自分にあった魔法を検査することができる。
小さな街であるエターナにも例外なく訓練所を見つけることが出来た。
むしろエターナは港と訓練所以外には何もないといっても言いぐらいの規模の街だったが……
検査はペーパーテストから血液検査やらなんか変な液体のまされたりいろんなコトをさせられた。
うーん!魔法使いってみんなこんな風にしてたのかな!!
―――
カイドに向かっていたと思ったら衆についていた以上の衝撃の事実
魔法スキルの 素質 0
12.国(タイトル13と入れ替え)
2007年2月20日「えーと えー ヘロ様へ と
―俺に暴行を加えてくれた女へ
「俺はこの戦争で自覚しました。俺はただの役立たずです。本当は何の力ももってない初心者なんです。」
―ちんけな戦争だった。俺の超魔法を発揮させる必要もないくらいな。
「俺はこれからカイドに行って魔法を習うつもりです。今はただの役立たずでも、いつか誰かを守れる存在になれたらいいなと思う。」
―カイドには俺の超魔法の訓練を待っている奴らがたくさんいるから行かなくちゃならない。ついでに超魔法の開発もあるしな。
「いつかまた会えたらな、と思っています。結構好みのタイプでした。」
―お前みたいな女にはもう2度と会いたくない。せいぜい筋肉でも鍛えてるんだな。
「それじゃあ最後に、死なないで下さい。」
―最後に、……死ぬな。
「ウルトンより っと、んー なかなかの名文。流石俺。」
今はカイド行きの馬車に乗っている。
シムシ国との戦闘での治療を簡単にすませ、その足でプロ行きの馬車に乗った。
スンラとは別れの挨拶ができたが
―スンラは左手の薬指を失っていた。お前なんでそんなピンポイントで無くすんだよ。最低なスンラだ。―
ヘロとは会う事が出来なかったのでプロで便箋と手紙を買い、
すぐに手紙を書いてヘロの元に送ってもらった。さすがプロの街。どんな職業の奴でもいる。
目的はプロの街の観光じゃないのですぐにカイド行きの馬車を探して乗った。
ついにカイドだ。
ひどい遠回りだったと思う。でも得たものもでかいと思う。
あの戦争のようなことはなかなか味わえない。味わいたくも無い。
ごちゃごちゃ考えているうちにカイド国に到着。
祝!俺の感動の第2歩目!
―俺に暴行を加えてくれた女へ
「俺はこの戦争で自覚しました。俺はただの役立たずです。本当は何の力ももってない初心者なんです。」
―ちんけな戦争だった。俺の超魔法を発揮させる必要もないくらいな。
「俺はこれからカイドに行って魔法を習うつもりです。今はただの役立たずでも、いつか誰かを守れる存在になれたらいいなと思う。」
―カイドには俺の超魔法の訓練を待っている奴らがたくさんいるから行かなくちゃならない。ついでに超魔法の開発もあるしな。
「いつかまた会えたらな、と思っています。結構好みのタイプでした。」
―お前みたいな女にはもう2度と会いたくない。せいぜい筋肉でも鍛えてるんだな。
「それじゃあ最後に、死なないで下さい。」
―最後に、……死ぬな。
「ウルトンより っと、んー なかなかの名文。流石俺。」
今はカイド行きの馬車に乗っている。
シムシ国との戦闘での治療を簡単にすませ、その足でプロ行きの馬車に乗った。
スンラとは別れの挨拶ができたが
―スンラは左手の薬指を失っていた。お前なんでそんなピンポイントで無くすんだよ。最低なスンラだ。―
ヘロとは会う事が出来なかったのでプロで便箋と手紙を買い、
すぐに手紙を書いてヘロの元に送ってもらった。さすがプロの街。どんな職業の奴でもいる。
目的はプロの街の観光じゃないのですぐにカイド行きの馬車を探して乗った。
ついにカイドだ。
ひどい遠回りだったと思う。でも得たものもでかいと思う。
あの戦争のようなことはなかなか味わえない。味わいたくも無い。
ごちゃごちゃ考えているうちにカイド国に到着。
祝!俺の感動の第2歩目!
11.ゲーム
2007年2月20日結果から言うと、この日の戦いは衆の勝利に終わった。
シムシの隊長と思われる奴の『よーし、突撃!』という大声のあとシムシ兵は脱兎のごとく逃げ出した。
せっかく逃げてくれるんだから追う必要は無いじゃないか と俺は思うのだが
衆の皆さんは血気盛ん、ものすごい勢いで追い立てる。
そこからが地獄だった。
敵が張ったバリアにカグツチの業火が防がれ、弾けとんだ。
そのせいで味方が 大量に、死んだ。
さらにひどいこともある。
シムシ兵で3人逃げていない奴らがいた。
恐らくは他の兵を逃がすための壁役みたいなものだろう。
3人の兵に 50人の衆の屈強な男たちがやられた。
いや……正しくはたった1人の戦士…なのかもしれない。隻眼の剣士……
遠目で見ていた俺には良く分からなかったが、3人のシムシ兵はいつのまにか消えていた。
結果としては勝ったわけだが、両国ともたくさんの犠牲者がでた。
死んだといってもこれはゲームだ。実世界には何の害も無い。
でも彼らだってこの世界でもっとやりたいことがあったんじゃないか?
シムシ側から聞こえた
「奴ら、死ぬことなんてなんでもないんだ!」
という言葉。
確かに血の気の多い、戦うことだけを考えているやつもいただろう。
だけどヘロのように『衆を守りたい』というのは『死ぬのが怖くない』ではない。
俺は 何も出来なかった。
口ばっかで。
俺がもし 本当に魔法が使えたなら
何人かの命は救えたんだろうか?
今は守られる側。いつか、守る側になれるのだろうか?
――
*ポチの戦争とのクロスオーバー部分は脳内削除しておいてください。
シムシの隊長と思われる奴の『よーし、突撃!』という大声のあとシムシ兵は脱兎のごとく逃げ出した。
せっかく逃げてくれるんだから追う必要は無いじゃないか と俺は思うのだが
衆の皆さんは血気盛ん、ものすごい勢いで追い立てる。
そこからが地獄だった。
敵が張ったバリアにカグツチの業火が防がれ、弾けとんだ。
そのせいで味方が 大量に、死んだ。
さらにひどいこともある。
シムシ兵で3人逃げていない奴らがいた。
恐らくは他の兵を逃がすための壁役みたいなものだろう。
3人の兵に 50人の衆の屈強な男たちがやられた。
いや……正しくはたった1人の戦士…なのかもしれない。隻眼の剣士……
遠目で見ていた俺には良く分からなかったが、3人のシムシ兵はいつのまにか消えていた。
結果としては勝ったわけだが、両国ともたくさんの犠牲者がでた。
死んだといってもこれはゲームだ。実世界には何の害も無い。
でも彼らだってこの世界でもっとやりたいことがあったんじゃないか?
シムシ側から聞こえた
「奴ら、死ぬことなんてなんでもないんだ!」
という言葉。
確かに血の気の多い、戦うことだけを考えているやつもいただろう。
だけどヘロのように『衆を守りたい』というのは『死ぬのが怖くない』ではない。
俺は 何も出来なかった。
口ばっかで。
俺がもし 本当に魔法が使えたなら
何人かの命は救えたんだろうか?
今は守られる側。いつか、守る側になれるのだろうか?
――
*ポチの戦争とのクロスオーバー部分は脳内削除しておいてください。
10.業火
2007年2月20日カグツチの業火はものすごい。
一瞬で大量の敵を昇天。あれを守ることが前衛の仕事……そんなこと言ってられない。
混戦に突入したらもうカグツチは当てにはならない。
むしろこんな密集地に高密度灼熱ビームなんて打ってこられたら困る。死ぬ。
敵を倒すというか自分の身を守るのが俺の最重要な仕事だ。うん。
なるべく敵に目をつけられないように、なるべく……
敵と目が合う やばい こっちに向かってきた。
だが敵の首が落ちる。よくやった衆の野蛮人よ。
そんなことを2,3回繰り返していた。……流石にもう続かないだろう。
「うわあああああっ!?」
思わず叫び声をあげてしまった。いきなり目の前に腕が飛んできたからだ。
―――本当に運が良かったなあああ! 覚えとけよおおお!―――
マントを着けた青年が叫んでいた。
その光景に目を奪われて、ふっと背中に、微かな、本当に微かな違和感。
しゃがまなきゃ、と思った。でも 体は動かなかった。
次の瞬間、俺はこけていた。さっきまで俺の背中があったところに剣が突き出されている。
どうやら転んだのは、飛んできた右腕を踏んでバランスを崩したせいのようだ。
―何故か右腕はなくなっていたが
スキルレベルアップ:勘【C】
スキルレベルアップ:運【C】
脳内に文字が出てきた。知らん、確認している暇はない。すぐに身体を回転させて移動する。
それでも遅かった。腹の横に剣が突き刺さる。 少し 肉がえぐれた。
苦痛にうめいている暇はない。
逃げるか 倒すか しないと 死ぬ いやだ。
地面に仰向けに転がったまま無様に蹴りをだす。相手も同時に俺の喉元に向けて剣を突き下ろしていた。
どっちが速いかなんて、一目瞭然……
敵の剣が根元から折れて吹き飛んだ。
1拍おいて敵も吹き飛ぶ。昇天。
俺を殺そうとしていた敵がいた場所に、今は他の誰かが立っている。
あのスキンヘッドには見覚えがあった。いや衆にはスキンヘッドは多いのだけれども。
「大丈夫か?ウルトラマン」
「ウルトラマンじゃねえよこのスンラが!」
――
*ポチの戦争とのクロスオーバー部分は脳内削除しておいてください。
一瞬で大量の敵を昇天。あれを守ることが前衛の仕事……そんなこと言ってられない。
混戦に突入したらもうカグツチは当てにはならない。
むしろこんな密集地に高密度灼熱ビームなんて打ってこられたら困る。死ぬ。
敵を倒すというか自分の身を守るのが俺の最重要な仕事だ。うん。
なるべく敵に目をつけられないように、なるべく……
敵と目が合う やばい こっちに向かってきた。
だが敵の首が落ちる。よくやった衆の野蛮人よ。
そんなことを2,3回繰り返していた。……流石にもう続かないだろう。
「うわあああああっ!?」
思わず叫び声をあげてしまった。いきなり目の前に腕が飛んできたからだ。
―――本当に運が良かったなあああ! 覚えとけよおおお!―――
マントを着けた青年が叫んでいた。
その光景に目を奪われて、ふっと背中に、微かな、本当に微かな違和感。
しゃがまなきゃ、と思った。でも 体は動かなかった。
次の瞬間、俺はこけていた。さっきまで俺の背中があったところに剣が突き出されている。
どうやら転んだのは、飛んできた右腕を踏んでバランスを崩したせいのようだ。
―何故か右腕はなくなっていたが
スキルレベルアップ:勘【C】
スキルレベルアップ:運【C】
脳内に文字が出てきた。知らん、確認している暇はない。すぐに身体を回転させて移動する。
それでも遅かった。腹の横に剣が突き刺さる。 少し 肉がえぐれた。
苦痛にうめいている暇はない。
逃げるか 倒すか しないと 死ぬ いやだ。
地面に仰向けに転がったまま無様に蹴りをだす。相手も同時に俺の喉元に向けて剣を突き下ろしていた。
どっちが速いかなんて、一目瞭然……
敵の剣が根元から折れて吹き飛んだ。
1拍おいて敵も吹き飛ぶ。昇天。
俺を殺そうとしていた敵がいた場所に、今は他の誰かが立っている。
あのスキンヘッドには見覚えがあった。いや衆にはスキンヘッドは多いのだけれども。
「大丈夫か?ウルトラマン」
「ウルトラマンじゃねえよこのスンラが!」
――
*ポチの戦争とのクロスオーバー部分は脳内削除しておいてください。
9.ドラゴン
2007年2月20日異形神カグツチ
その姿からは神々しさは感じられなかった。
空飛ぶ化け物……炎の鳥
いや、威圧感からすればあれは、 炎のドラゴン
一瞬時が止まった
次の瞬間 灼熱のビームがカグツチの口から発せられ シムシ敵兵側に 届く。
昇天、昇天、大量の昇天。
圧倒的な強さだった。
何故あんな化け物がいて 小競り合いに終止符がつかないのか。
つまりそれは カグツチを倒せるプレイヤーが この世界にいる。ということだ。
あんな……化け物を……
カグツチさえいれば何とかなりそうだがそうもいかないらしい。
召還獣-カグツチのような化け物を含めた-は、召還士がやられると消えてしまう。
つまり前衛の最も大きな仕事は敵を倒す事 ではなく 召還士を守る事なのか……
混戦に、突入――
その姿からは神々しさは感じられなかった。
空飛ぶ化け物……炎の鳥
いや、威圧感からすればあれは、 炎のドラゴン
一瞬時が止まった
次の瞬間 灼熱のビームがカグツチの口から発せられ シムシ敵兵側に 届く。
昇天、昇天、大量の昇天。
圧倒的な強さだった。
何故あんな化け物がいて 小競り合いに終止符がつかないのか。
つまりそれは カグツチを倒せるプレイヤーが この世界にいる。ということだ。
あんな……化け物を……
カグツチさえいれば何とかなりそうだがそうもいかないらしい。
召還獣-カグツチのような化け物を含めた-は、召還士がやられると消えてしまう。
つまり前衛の最も大きな仕事は敵を倒す事 ではなく 召還士を守る事なのか……
混戦に、突入――
8.瞬間移動
2007年2月20日「突っ込めーー!!!死ぬ気でだぁああ!!」
流れる 流される 前に流される!!!
うしろのほうでちまちましてれば誰も気づかないだろう。と思っていたのが甘かった。
筋肉隆々のコゲパンどもが前にでる勢いでどんどん前に流されていく。
騎乗している奴もいるのでむしろ前進してないと危ない。というか俺後方支援じゃないの?(何も出来ないけど)
漫画の主人公なら瞬間移動ともいえるスピードで敵を次々にやっつけていくだろう。
でも現実(ゲームなんだけど)ではこういう歩兵戦術しかないものなのか……
覚悟を決めて走りながら谷の反対側を見渡す。
シムシ国-シンボル色なのだろうか、敵兵は全員青と白で彩られた鎧を着ている。
例えるならそう、アオカビチーズ、といったところか。
赤銅色の肌ではないから狙われないんじゃないのか?という甘い考えがあった。
でも相手が格好を統一してきている。あの鎧以外は敵とみなされるだろう。
どうしよう。でも足は止まらない。
後方部で怒鳴り声が聞こえる。
「カグツチを召還する!!召還士ども!準備はいいかああ!!!」
カグツチ?なんだそりゃ……
流れる 流される 前に流される!!!
うしろのほうでちまちましてれば誰も気づかないだろう。と思っていたのが甘かった。
筋肉隆々のコゲパンどもが前にでる勢いでどんどん前に流されていく。
騎乗している奴もいるのでむしろ前進してないと危ない。というか俺後方支援じゃないの?(何も出来ないけど)
漫画の主人公なら瞬間移動ともいえるスピードで敵を次々にやっつけていくだろう。
でも現実(ゲームなんだけど)ではこういう歩兵戦術しかないものなのか……
覚悟を決めて走りながら谷の反対側を見渡す。
シムシ国-シンボル色なのだろうか、敵兵は全員青と白で彩られた鎧を着ている。
例えるならそう、アオカビチーズ、といったところか。
赤銅色の肌ではないから狙われないんじゃないのか?という甘い考えがあった。
でも相手が格好を統一してきている。あの鎧以外は敵とみなされるだろう。
どうしよう。でも足は止まらない。
後方部で怒鳴り声が聞こえる。
「カグツチを召還する!!召還士ども!準備はいいかああ!!!」
カグツチ?なんだそりゃ……