106.幻(124から)
2008年12月1日 日常 コメント (1)―主よ、しっかりしてください。
―分かっていますよ。だからさっきからやっているじゃないですか?
―いいですか、これは敵の術。それは私が今ここに召還されていることからも明らかです。
―そうは言ってもですねえ、目目連。貴方はこの島に入ってから呼び出したわけではないですしねえ?
―強情な。
―貴方は術にかかっていないからそんなことが言えるんですよ?というかですね、貴方は何故洗脳されていないんです、貴方も彼女の言葉を聞いたのでしょう?
―私は聞いていません。言葉を読み取っていただけです。主とのテレパシーのようなものです。
―はぁ、そうですか?まあ何でも良いですから早くこの術を解いていただきたいのですが?もう余り時間がありませんよ?
―ですから、もう一度言います。これは敵の術、幻。いいですか、現ではないのです。幻であることを、意識なさってください。
―さっきからやってるんですけどねえ……?思うにこの術は、内部から破るには相当強い精神力が必要なのではないのでしょうか。
―だとしても、どうしようも……?
―?どうしたのですか、目目連。ワタクシは今五感が無いのですから、何かあったのなら説明……
ゴスッ
「ヅッ……!?」
ニヤイニレは突然の頭部への衝撃に地面に崩れ落ちた。どうやら側頭部を何か硬いもので殴打されたようだ。相当のダメージを負ったミヤイニレはそのままうずくまり、呻き声を暫く漏らしていた。
ズキズキと痛む箇所を押さえながらようやく痛みに耐えられるようになった時、目の前に誰かが立っていることに気がついた。自分がいつの間にか視覚を取り戻していることも、その時になってやっと気づくことができた。
「貴方は……いや、まず、とりあえず、やりすぎだと思うのですがそれについては如何ですか?」
「お前が一人でブツブツと唸っているから目を覚ましてやっただけじゃねえか」
殴った男に悪びれる様子は全く無い。むしろ本気で謝礼を要求しそうな態度だ。
「そうですか、それにしては?いや、今はいいでしょう。
……【ゼロ】様はもう到着してしまっているわけですねえ」
ミヤイニレは時刻を確認して猶予が思っていた以上に無くなっていることを知った。捕獲に失敗した今、敵の計画を阻止するため、そして何より今得たこの新しい情報を伝えるためにもウルトン達の元へ急がなくてはならない。
「ところで、一つ質問よろしいでしょうか」
「俺が何でここにいるのかっつう質問なら面倒だから答えねえぞ」
「それは良かった、では失礼?
何故ワタクシを殺さなかったのですか?」
これには男も意外そうな顔をした。馬鹿かてめえは、と前置きし
「俺がお前を殺す意味なんざねえじゃねえか。シムシの得になるわけでも無し。多少は前の借りも含めて殴ってやったがな」
「ああやはり?」
ミヤイニレは殴られた箇所をさすりながら謎が解けたという顔をした。そして自分を殺す勢いで殴打した男、グィンセイミに軽く別れの挨拶をし
―さあて、目目連?頑張って頂きますよ。
―対価を払うのは主だ。頑張るのは私ではない。
テレパシーで目目連と会話をしながら鍾乳洞の内部へ向かって足早に歩き始め、姿を消した。
―分かっていますよ。だからさっきからやっているじゃないですか?
―いいですか、これは敵の術。それは私が今ここに召還されていることからも明らかです。
―そうは言ってもですねえ、目目連。貴方はこの島に入ってから呼び出したわけではないですしねえ?
―強情な。
―貴方は術にかかっていないからそんなことが言えるんですよ?というかですね、貴方は何故洗脳されていないんです、貴方も彼女の言葉を聞いたのでしょう?
―私は聞いていません。言葉を読み取っていただけです。主とのテレパシーのようなものです。
―はぁ、そうですか?まあ何でも良いですから早くこの術を解いていただきたいのですが?もう余り時間がありませんよ?
―ですから、もう一度言います。これは敵の術、幻。いいですか、現ではないのです。幻であることを、意識なさってください。
―さっきからやってるんですけどねえ……?思うにこの術は、内部から破るには相当強い精神力が必要なのではないのでしょうか。
―だとしても、どうしようも……?
―?どうしたのですか、目目連。ワタクシは今五感が無いのですから、何かあったのなら説明……
ゴスッ
「ヅッ……!?」
ニヤイニレは突然の頭部への衝撃に地面に崩れ落ちた。どうやら側頭部を何か硬いもので殴打されたようだ。相当のダメージを負ったミヤイニレはそのままうずくまり、呻き声を暫く漏らしていた。
ズキズキと痛む箇所を押さえながらようやく痛みに耐えられるようになった時、目の前に誰かが立っていることに気がついた。自分がいつの間にか視覚を取り戻していることも、その時になってやっと気づくことができた。
「貴方は……いや、まず、とりあえず、やりすぎだと思うのですがそれについては如何ですか?」
「お前が一人でブツブツと唸っているから目を覚ましてやっただけじゃねえか」
殴った男に悪びれる様子は全く無い。むしろ本気で謝礼を要求しそうな態度だ。
「そうですか、それにしては?いや、今はいいでしょう。
……【ゼロ】様はもう到着してしまっているわけですねえ」
ミヤイニレは時刻を確認して猶予が思っていた以上に無くなっていることを知った。捕獲に失敗した今、敵の計画を阻止するため、そして何より今得たこの新しい情報を伝えるためにもウルトン達の元へ急がなくてはならない。
「ところで、一つ質問よろしいでしょうか」
「俺が何でここにいるのかっつう質問なら面倒だから答えねえぞ」
「それは良かった、では失礼?
何故ワタクシを殺さなかったのですか?」
これには男も意外そうな顔をした。馬鹿かてめえは、と前置きし
「俺がお前を殺す意味なんざねえじゃねえか。シムシの得になるわけでも無し。多少は前の借りも含めて殴ってやったがな」
「ああやはり?」
ミヤイニレは殴られた箇所をさすりながら謎が解けたという顔をした。そして自分を殺す勢いで殴打した男、グィンセイミに軽く別れの挨拶をし
―さあて、目目連?頑張って頂きますよ。
―対価を払うのは主だ。頑張るのは私ではない。
テレパシーで目目連と会話をしながら鍾乳洞の内部へ向かって足早に歩き始め、姿を消した。
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