87.炎
2008年6月5日 気付くと【猫】からプレイヤーネームと場所を聞き出して走り出していた。
向かってどうする?殺すのか?仇を取るってのはそういう事なのか?お姉さんは【灰身】を止めたがっていた。ならとりあえず、とっ捕まえて問い詰める!そして必要なら、俺が止める。恨みが全く無いわけじゃない。だけどそれが意思を継ぐって事だろ!
しばらく走った先の、海沿いの通りに2人はいた。
金髪の派手な男と、濃いサーモンピンクの髪の快活な性格をしてそうな女。【ネーム:確認】【ジャスティス】・【ミンティス】間違いない。
「おい!そこの2人!」
不意打ち、男がこちらを振り向いたときにはもう詠唱は終わらせていた。
【炎魔法】で2人のプレイヤーを炎の渦に閉じ込める。散々使ってきた魔法だ、ダメージを与えずに動きだけを封じるように発動させる事は楽だった。
「【灰身】だな。大人しく質問に答えるんなら、危害は加えない」
相手は何をしてくるか分からない。問い詰める側は、高圧的に、優位に立つのが常識だ。
「……気に入らないな。ソレが質問する側の態度か?」
「ジャス!大人しく従おうよ!燃えちゃうよ!!」
女のほうは従順だったが、男のほうはきわめて冷静で怒りを含んだ舐めた反応だった。とりあえず、どう喚こうがこいつらは俺に従うしかない、と思っていた。が。
「燃えたくないなら、こうすればいい!」
男が叫んだ。
「え?ちょっうわああああああ!!」
同時に女が悲鳴と共に"炎の外"へ落下してきた。炎の渦はプレイヤーの周囲を流動するだけで、上はがら空きで何もない。つまり女はそこから出てきたということになる。恐らく男が投げ飛ばしたんだろうが、普通そんなことしようとしないだろう馬鹿か。
「あいたたた……ジャスひど……」
女の体のどこにも火がついていないのは、さっきまで男のほうがつけていた真紅のマントを羽織っていることに関係するんだろう。恐らく【炎耐性】効果つきのアイテムか何かだ。それでも炎の壁を突っ切ってこなかった事を考えると万能じゃないってことだ。
「やれ!ミン!」
「う、うん」
男が炎の中から叫ぶ。何をさせるつもりなのか知らねーが、この女に大した戦闘能力があるとは思えない。でも相手は【灰身】だ、舐めちゃ……
「あたしの正義が、あなたを裁く!」
……本人は真剣なのかもしれないが、迫力も何もない。もしかしたら単純にこっちが舐められているだけなのかもしれない。
さてどうするか、2個の炎の渦を維持することは俺には無理。なら一時的に炎を解くか?でもそれが相手の狙いかもしれないし……
「むんっ」
情けない声が聞こえたと思った瞬間、俺の体が急に動かなくなった。何だこれは?動かそうとしても、壁にでも埋まったかのように指先すらピクリともしない。これがあの女の力なのか?反則だろ、やばい、声もでねえ!
魔法と言うのはイメージの力、高等な魔法使いになると、純粋にイメージだけで魔法を自在に操ることができるらしい。だけど俺はまだ、魔法を持続させるのにも定期的な詠唱が必要だ。
つまり今の状況イコール口が動かないイコール詠唱ができないイコール魔法が持続できないイコール……
「さあ、今度はコチラが質問する側だぜ」
火力が収まった炎から出てきた金髪男が、高圧的にそう言った。どこから取り出したのか分からないが、金属製のマントと同じ真紅の弓を構えている。矢は既につがえられていて、俺の頭を一直線に狙っていた。
「妙な気は起こすなよ。オマエが少しでもおかしな動きをしたら、その時点で命は無くなると思え。ミン、もういいぞ」
男の言葉によって女から威圧感が消えたと同時に、俺の体は自由になった。自由にはなったが、もう既に動く事はできない。
「ではコチラから質問する。オマエはオレ達に何を聞こうとしてたのか、だ」
つまり俺の質問には答えてくれるっていうことだ。さっきと変わっているのは立場が逆転している事だけだ。それがかなり大きい。屈辱的だが、それ以上に優位性を失ったことはかなり痛い。だが俺のやることは変わらない。
「お前ら【灰身】は、何で人を殺す」
単刀直入に。最も聞きたい事だけを聞く。
「【灰身】の正義をオレが理解しているのかは分からないが、オレ達がPKKをするのはソレがオレ達の正義だからだ」
「じゃあお前等の正義ってのは、罪も無い奴らを殺すのか?それが正義だって言うのかよ」
もし、そうならば、【灰身】は本当にどうしようもないほど、悪党で。そんな奴らに、お姉さんは殺されたってことか?もしそうなら……
「……確かに、【灰身】の正義にそれが含まれていた、かもしれない。それはオレには否定できない」
「っざけんな!」
俺がこいつらを止める!!
向かってどうする?殺すのか?仇を取るってのはそういう事なのか?お姉さんは【灰身】を止めたがっていた。ならとりあえず、とっ捕まえて問い詰める!そして必要なら、俺が止める。恨みが全く無いわけじゃない。だけどそれが意思を継ぐって事だろ!
しばらく走った先の、海沿いの通りに2人はいた。
金髪の派手な男と、濃いサーモンピンクの髪の快活な性格をしてそうな女。【ネーム:確認】【ジャスティス】・【ミンティス】間違いない。
「おい!そこの2人!」
不意打ち、男がこちらを振り向いたときにはもう詠唱は終わらせていた。
【炎魔法】で2人のプレイヤーを炎の渦に閉じ込める。散々使ってきた魔法だ、ダメージを与えずに動きだけを封じるように発動させる事は楽だった。
「【灰身】だな。大人しく質問に答えるんなら、危害は加えない」
相手は何をしてくるか分からない。問い詰める側は、高圧的に、優位に立つのが常識だ。
「……気に入らないな。ソレが質問する側の態度か?」
「ジャス!大人しく従おうよ!燃えちゃうよ!!」
女のほうは従順だったが、男のほうはきわめて冷静で怒りを含んだ舐めた反応だった。とりあえず、どう喚こうがこいつらは俺に従うしかない、と思っていた。が。
「燃えたくないなら、こうすればいい!」
男が叫んだ。
「え?ちょっうわああああああ!!」
同時に女が悲鳴と共に"炎の外"へ落下してきた。炎の渦はプレイヤーの周囲を流動するだけで、上はがら空きで何もない。つまり女はそこから出てきたということになる。恐らく男が投げ飛ばしたんだろうが、普通そんなことしようとしないだろう馬鹿か。
「あいたたた……ジャスひど……」
女の体のどこにも火がついていないのは、さっきまで男のほうがつけていた真紅のマントを羽織っていることに関係するんだろう。恐らく【炎耐性】効果つきのアイテムか何かだ。それでも炎の壁を突っ切ってこなかった事を考えると万能じゃないってことだ。
「やれ!ミン!」
「う、うん」
男が炎の中から叫ぶ。何をさせるつもりなのか知らねーが、この女に大した戦闘能力があるとは思えない。でも相手は【灰身】だ、舐めちゃ……
「あたしの正義が、あなたを裁く!」
……本人は真剣なのかもしれないが、迫力も何もない。もしかしたら単純にこっちが舐められているだけなのかもしれない。
さてどうするか、2個の炎の渦を維持することは俺には無理。なら一時的に炎を解くか?でもそれが相手の狙いかもしれないし……
「むんっ」
情けない声が聞こえたと思った瞬間、俺の体が急に動かなくなった。何だこれは?動かそうとしても、壁にでも埋まったかのように指先すらピクリともしない。これがあの女の力なのか?反則だろ、やばい、声もでねえ!
魔法と言うのはイメージの力、高等な魔法使いになると、純粋にイメージだけで魔法を自在に操ることができるらしい。だけど俺はまだ、魔法を持続させるのにも定期的な詠唱が必要だ。
つまり今の状況イコール口が動かないイコール詠唱ができないイコール魔法が持続できないイコール……
「さあ、今度はコチラが質問する側だぜ」
火力が収まった炎から出てきた金髪男が、高圧的にそう言った。どこから取り出したのか分からないが、金属製のマントと同じ真紅の弓を構えている。矢は既につがえられていて、俺の頭を一直線に狙っていた。
「妙な気は起こすなよ。オマエが少しでもおかしな動きをしたら、その時点で命は無くなると思え。ミン、もういいぞ」
男の言葉によって女から威圧感が消えたと同時に、俺の体は自由になった。自由にはなったが、もう既に動く事はできない。
「ではコチラから質問する。オマエはオレ達に何を聞こうとしてたのか、だ」
つまり俺の質問には答えてくれるっていうことだ。さっきと変わっているのは立場が逆転している事だけだ。それがかなり大きい。屈辱的だが、それ以上に優位性を失ったことはかなり痛い。だが俺のやることは変わらない。
「お前ら【灰身】は、何で人を殺す」
単刀直入に。最も聞きたい事だけを聞く。
「【灰身】の正義をオレが理解しているのかは分からないが、オレ達がPKKをするのはソレがオレ達の正義だからだ」
「じゃあお前等の正義ってのは、罪も無い奴らを殺すのか?それが正義だって言うのかよ」
もし、そうならば、【灰身】は本当にどうしようもないほど、悪党で。そんな奴らに、お姉さんは殺されたってことか?もしそうなら……
「……確かに、【灰身】の正義にそれが含まれていた、かもしれない。それはオレには否定できない」
「っざけんな!」
俺がこいつらを止める!!
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