番外編:本部にて2
2008年5月29日 時は少しさかのぼり、太陽がちょっと傾いた頃の、ミンティスのお話。
−−−
「ジャスまだ来ないなあ」
あれから本部でしばらくまってもジャス(ジャスティスの愛称、あたしたちはジャスとミンって呼び合ってる)は来なかった。【目目連】がここにあったってことはここにいろ、って意味だと思うんだけど……
−1時間後 まだジャスは来ない。
暇だしだいぶ汚くなってるから、部屋の掃除でもしようかな?と思ったけど止めておいた。この部屋には思い出の品がたくさん詰まっている。転がっているだけの一見するとただのガラクタでも、"そこに転がっている"ことが思い出になる。多分、皆が皆そんなことを考えているから"本部"であるこの部屋は汚いままなんだと思う。
「そろそろ電気でもつけようかな……ん?」
ドアのほうから足音が聞こえた。反射的に書斎机の裏に身を隠す。荒っぽい足音は複数、ジャスの足音は無い。……侵入者?何のために?
足音は廊下を通りすぎ、本部の中に一つしかない部屋(つまりあたしが今いる部屋)にたどり着く。
「ちっ誰もいねえのかよ」
恐らく集団の先頭にいる男が声を発した。少し聞き覚えのある声だった。確か、少し前に【灰身】に集団で入ってきた男だ。あたしたちは偶然そのとき本部にいたから覚えている。
「あの野郎、殺してやる」
あの野郎、ってのは多分ジャスのことだ。何をやったのかわからないけど、ジャスならきっと人に憎まれることぐらいいくつもやってると思う。
彼らが【灰身】メンバーだとしても、穏やかじゃない。言ってることからしても"本部に挨拶に来ました!"というわけでは、全然無いんだろう。
自慢じゃないけど、あたしは弱い。一人じゃ何も出来ないできそこないだ。ジャスからも一人のときは慎重に動くように、っていつもくどくど言われている。だからあたしは机の裏にずっと隠れてやりすごすつもりだった。
つもりだった。彼らが室内の"ガラクタ"を壊し始めるまでは。
「やめて!」
気付いたら叫びながら飛び出していた。せいぜい10人ぐらいだと思っていたのに、集団はゆうに20人を超えていた。
部屋に人がいることに気付いた彼らは廊下にいた人達も集めて招き入れた。少しだけ広い部屋が人で一杯になる。
「この部屋の物を壊すのはやめて。できればここからでていって」
怖くない。どちらかといえば衆の砂漠のほうが怖かった。本部だから皆が見守ってくれているような気になるからかも。
「ミンティスさんよぉ、俺たちはイライラしてんの、だからあそんな舐めた口聞いてるとお」
彼はそう良いながらそばにあった壷を蹴り壊した。
「ぶっ殺……!?」
止めた。これ以上この"ガラクタ"を壊させない。
【念止力】、範囲-【視界全域】、対象-【プレイヤー:22人】 全て、静止。
「……ッ!!」
【念止力】は視界に入ってる対象の動きを全て、厳密に止める。
しかし、これに殺傷能力はない。呼吸や心臓の動きなど体内部の動きは止めることが出来ない。効果が及ぶのは"見える部分"だけなのだ。
でもそれをこの人たちは知らない。知らないからぞろぞろでてきて、自分たちから動きをあたしに封じられて、固まっている人の後ろに隠れていれば無事なのに、でも一部分でも見えたらそこの動きは止められるんだけど、でもだから、えーとだから?なんだっけ、あれぐるんぐるんしてきた、ああダメ、よく前が見えない止められないぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
「ぐ……」
だめ、ねちゃだめ。目を開けなきゃ、あれなんで目の前に床があるの?顔、上げなきゃ。止めなきゃ。彼らの笑い声が微かに聞こえてくる。ああそうかぁ、あたしじゃやっぱりダメみたい。
「ジャス……」
ゴスッ
突然目の前に血まみれの男の頭が転がった。すぐに昇天の光があがり消え去る。部屋の空気が変わったのだけは微かに分かった。
「…ら・・・レ…【眠り……てんだ!?」
聞き覚えのある声。懇親の力で顔を上げて、【念止力】。意識が飛びそう、数秒でいいから。もう少し、もう少し頑張らなくちゃ……
「オレの正義が、オマエを裁く!!」
ああ、もう安心。おやすみ、ジャス……
―――日が沈み始めたぐらい――
広い背中。暖かくて懐かしい、ちょっと離れてただけなのにな。
「おら、起きたんなら自分で歩け」
「……ばれた?」
「たりめーだ」
そういいながらもジャスは寝起きのあたしを無理やり落とそうとはしない。
あたしは知ってるよ。あなたの優しさ。長くペアを組んでてやっと感じ取れるぐらいでわかりにくいけどさっ。
頭がはっきりしてくるにうちに意識が飛ぶ前の記憶もはっきりしてきた。
『オマエら、オレの【眠り姫】に、何してんだ!?』
「うふふっ」
「んだよ気持ち悪いな」
「ありがとっ!」
ジャスの優しさ、あたしはちゃんと受け止めてるよ。
「おら、行くぞ」
投げ落とされたけどね!
−−−
「ジャスまだ来ないなあ」
あれから本部でしばらくまってもジャス(ジャスティスの愛称、あたしたちはジャスとミンって呼び合ってる)は来なかった。【目目連】がここにあったってことはここにいろ、って意味だと思うんだけど……
−1時間後 まだジャスは来ない。
暇だしだいぶ汚くなってるから、部屋の掃除でもしようかな?と思ったけど止めておいた。この部屋には思い出の品がたくさん詰まっている。転がっているだけの一見するとただのガラクタでも、"そこに転がっている"ことが思い出になる。多分、皆が皆そんなことを考えているから"本部"であるこの部屋は汚いままなんだと思う。
「そろそろ電気でもつけようかな……ん?」
ドアのほうから足音が聞こえた。反射的に書斎机の裏に身を隠す。荒っぽい足音は複数、ジャスの足音は無い。……侵入者?何のために?
足音は廊下を通りすぎ、本部の中に一つしかない部屋(つまりあたしが今いる部屋)にたどり着く。
「ちっ誰もいねえのかよ」
恐らく集団の先頭にいる男が声を発した。少し聞き覚えのある声だった。確か、少し前に【灰身】に集団で入ってきた男だ。あたしたちは偶然そのとき本部にいたから覚えている。
「あの野郎、殺してやる」
あの野郎、ってのは多分ジャスのことだ。何をやったのかわからないけど、ジャスならきっと人に憎まれることぐらいいくつもやってると思う。
彼らが【灰身】メンバーだとしても、穏やかじゃない。言ってることからしても"本部に挨拶に来ました!"というわけでは、全然無いんだろう。
自慢じゃないけど、あたしは弱い。一人じゃ何も出来ないできそこないだ。ジャスからも一人のときは慎重に動くように、っていつもくどくど言われている。だからあたしは机の裏にずっと隠れてやりすごすつもりだった。
つもりだった。彼らが室内の"ガラクタ"を壊し始めるまでは。
「やめて!」
気付いたら叫びながら飛び出していた。せいぜい10人ぐらいだと思っていたのに、集団はゆうに20人を超えていた。
部屋に人がいることに気付いた彼らは廊下にいた人達も集めて招き入れた。少しだけ広い部屋が人で一杯になる。
「この部屋の物を壊すのはやめて。できればここからでていって」
怖くない。どちらかといえば衆の砂漠のほうが怖かった。本部だから皆が見守ってくれているような気になるからかも。
「ミンティスさんよぉ、俺たちはイライラしてんの、だからあそんな舐めた口聞いてるとお」
彼はそう良いながらそばにあった壷を蹴り壊した。
「ぶっ殺……!?」
止めた。これ以上この"ガラクタ"を壊させない。
【念止力】、範囲-【視界全域】、対象-【プレイヤー:22人】 全て、静止。
「……ッ!!」
【念止力】は視界に入ってる対象の動きを全て、厳密に止める。
しかし、これに殺傷能力はない。呼吸や心臓の動きなど体内部の動きは止めることが出来ない。効果が及ぶのは"見える部分"だけなのだ。
でもそれをこの人たちは知らない。知らないからぞろぞろでてきて、自分たちから動きをあたしに封じられて、固まっている人の後ろに隠れていれば無事なのに、でも一部分でも見えたらそこの動きは止められるんだけど、でもだから、えーとだから?なんだっけ、あれぐるんぐるんしてきた、ああダメ、よく前が見えない止められないぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。
「ぐ……」
だめ、ねちゃだめ。目を開けなきゃ、あれなんで目の前に床があるの?顔、上げなきゃ。止めなきゃ。彼らの笑い声が微かに聞こえてくる。ああそうかぁ、あたしじゃやっぱりダメみたい。
「ジャス……」
ゴスッ
突然目の前に血まみれの男の頭が転がった。すぐに昇天の光があがり消え去る。部屋の空気が変わったのだけは微かに分かった。
「…ら・・・レ…【眠り……てんだ!?」
聞き覚えのある声。懇親の力で顔を上げて、【念止力】。意識が飛びそう、数秒でいいから。もう少し、もう少し頑張らなくちゃ……
「オレの正義が、オマエを裁く!!」
ああ、もう安心。おやすみ、ジャス……
―――日が沈み始めたぐらい――
広い背中。暖かくて懐かしい、ちょっと離れてただけなのにな。
「おら、起きたんなら自分で歩け」
「……ばれた?」
「たりめーだ」
そういいながらもジャスは寝起きのあたしを無理やり落とそうとはしない。
あたしは知ってるよ。あなたの優しさ。長くペアを組んでてやっと感じ取れるぐらいでわかりにくいけどさっ。
頭がはっきりしてくるにうちに意識が飛ぶ前の記憶もはっきりしてきた。
『オマエら、オレの【眠り姫】に、何してんだ!?』
「うふふっ」
「んだよ気持ち悪いな」
「ありがとっ!」
ジャスの優しさ、あたしはちゃんと受け止めてるよ。
「おら、行くぞ」
投げ落とされたけどね!
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