76.離 

2008年5月19日
「つーわけでだ。この遺跡には微弱だが飛行能力が備えられている。
 エネルギーを異常に喰うが、ある程度なら移動は可能だ」
 
 グィンセイミは村人に震動の説明をしていた。遺跡は空を飛び続けている。
 
「いいか?これは俺の報酬だ。俺がこの遺跡をどうしようが、お前らに文句は言わせねぇ。
 とりあえず、ある程度進んだらシムシに近い衆の砂漠に下ろす。衆は内乱で忙しいからな、上手くいけば邪魔は入らねえ。それにシムシには……
 
「カイドに向かえ」
 声を遮ったのは、ウルトンだった。
 
「カイドに向かえ。でないと、焼き殺す
 グィンセイミはウルトンの掌から湧き上がる火柱に一瞬たじろいだが、
 
「……ざけんじゃねえ」
 意志を変えることは無かった。
 
 火柱が、大きく、強くなる。すでに自らの皮膚が焼けただれ始めていたが、ウルトンはそれに気付いてもいないようだった。
 
「これは、俺と"あの女"の取引だ。お前に口を出す権利は、ねぇ」
「……!」
 怒りとも悲しみとも取れないような表情に顔を歪ませ、ウルトンはその場を離れた。
 民衆、そしてリペノさえもウルトンの異様な雰囲気に押され、見ている事しか出来なかった。
 
 
−−−
 数日後。
 砂漠に着陸した集落から、3人のプレイヤーが現れた。
 それぞれほとんど会話を交わすことなく、その場を離れる。
 グィンはシムシへ。リペノは衆国の中心部へ。そしてウルトンは……カイドへ。

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