70.衆
2008年2月2日 スライム。どこでも売っているようなモンスター図鑑にも載っている有名なモンスターだ。
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スライム
危険度:中〜高
体構造:粘体から流体、稀に固体の種も存在する。
注意点:どんな小さな固体でも初心者は見かけたらとりあえず逃げること。
移動スピードは基本的に遅いが再生能力が高いので、魔法が有効。
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そうだ、確か本にはこう書いてあった。だからスライム系モンスターと戦うときは直接攻撃は基本的に無意味になっている。なのにあいつは何をしているんだ。
もう少し良く見ようと瞼に力をいれ視界を広げる。グィンだ。紅い本体から次々と吐き出される粘液を避け、もしくは工具箱で受けながらグィンセイミは戦っていた。
お前ボロボロじゃねーか、ああ、ボロボロなのは俺か……
「すごいですねえ、その箱?何で出来ているんでしょうか、これだけの溶解粘液を受けてまだ原型を留めているとは!ワタクシは今日は【科学】にまで敬意を払う事になるかも知れませんね?」
体を動かす力は無くてもミヤイニレのムカツク喋り声は自然に耳に届く。スライムの中という意味不明な場所にいるためか、奴の声は多少こもっていた。そもそも何故あいつはスライムの中にいることが出来るんだろうか。
「けれども、肝心の貴方がそれではダメですね?ダメダメですね?そもそも近接タイプの利点は『相手の動きを御しやすい』というところにあるのですよ。召喚師と戦う場合は『召喚する前に倒す』が鉄則、常識なのですよ?ワタクシが【血濡れのジョゴス】を既に呼んでしまっている時点で貴方に勝ち目は微塵もありません」
確かに言うとおりだ。グィンの奴は防戦一方でミヤイニレには一歩も近づけていない。魔法が使えたら、俺が援護できたら。
【流砲】の詠唱、イメージの固定化、毒による精神の不安定、思考が定まらない、不発、魔法が使えないくそくそくそくそ!
……ここまで無力感を味わったのは、衆でボコボコにされたとき以来か。あの時は、俺は弱くて、それでも魔法なら何でもできると思っていて、【ゼロ】なんてものも知らなくて。……【ゼロ】?
「まあかの有名な【隻眼】なら召喚後でもどうだかはわかりませんけれどもね?我等がリーダー様でも可能かもしれませんねえ。覚えて置いてください?近接タイプが遠距離タイプと戦う上で最も重要なのはスピード!更に重要なのは知能!Bestest!ですね?」
「ああそうかい。別に俺はお前に勝てなくてもいいしなあ?そろそろ遮断システムも完成する頃だ、お前をあと少し足止めすりゃあいいだけのことだ」
「……………………ふう。
仕方が無いですね」
ミヤイニレからニヤニヤ笑いが完全に消え、目つきが変わった。やばい、ヤバイ、何かがヤバイ。
スライムが膨張し始める。そうだ、良く考えてみればあんなに巨大なスライムを召喚しておいて何故こいつは粘液を飛ばすだけだった?遊んでいたのか、まだ舐められていたのか、いやそんなことはどうでもいい。ここでやるしかない、やれなくてもやるしかない!
もし、【毒耐性】によってスライムの粘液に耐えているのだとしたら、
「ミヤイニレ!」
「おや、【ゼロ】様、まだ生きていたのですか。
非常に残念ですがお遊びの時間は終わったのです」
施行。念じる。
「お前の!」
「……?」
スキルチェック−【毒耐性】−
「【毒耐性】を!!」
「な!?」
【ゼロ】に!
「【煙霞の跡なく目目連】!!」
ジュッという音がして、ミヤイニレの体の一部が解けるのを確認した。間違いない、奴は【毒耐性】でスライムの粘液を防いでいたんだ。
しかし次の瞬間、スライムの中心にいたのは巨大な黒い目玉だった。目玉は甲高く鳴いた(どこからかは知らないが)後、どこかへ消えうせた。
ミヤイニレは逃げた、恐らく逃げたのだろう。良かった、守りきれた。
「おいてめぇが何をしたかしらねえが、余計なことをしてくれたな」
「ケチつける気か?俺の超魔法のおかげで奴はスタコラ逃げていったんだぜ?」
「そうかもしれねえが、一番厄介なのが残っただろうがよ」
「一番厄介なものって……?」
グィンの言葉に周りを見渡す。居た、残っていた。
紅い巨大なスライムが。
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スライム
危険度:中〜高
体構造:粘体から流体、稀に固体の種も存在する。
注意点:どんな小さな固体でも初心者は見かけたらとりあえず逃げること。
移動スピードは基本的に遅いが再生能力が高いので、魔法が有効。
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そうだ、確か本にはこう書いてあった。だからスライム系モンスターと戦うときは直接攻撃は基本的に無意味になっている。なのにあいつは何をしているんだ。
もう少し良く見ようと瞼に力をいれ視界を広げる。グィンだ。紅い本体から次々と吐き出される粘液を避け、もしくは工具箱で受けながらグィンセイミは戦っていた。
お前ボロボロじゃねーか、ああ、ボロボロなのは俺か……
「すごいですねえ、その箱?何で出来ているんでしょうか、これだけの溶解粘液を受けてまだ原型を留めているとは!ワタクシは今日は【科学】にまで敬意を払う事になるかも知れませんね?」
体を動かす力は無くてもミヤイニレのムカツク喋り声は自然に耳に届く。スライムの中という意味不明な場所にいるためか、奴の声は多少こもっていた。そもそも何故あいつはスライムの中にいることが出来るんだろうか。
「けれども、肝心の貴方がそれではダメですね?ダメダメですね?そもそも近接タイプの利点は『相手の動きを御しやすい』というところにあるのですよ。召喚師と戦う場合は『召喚する前に倒す』が鉄則、常識なのですよ?ワタクシが【血濡れのジョゴス】を既に呼んでしまっている時点で貴方に勝ち目は微塵もありません」
確かに言うとおりだ。グィンの奴は防戦一方でミヤイニレには一歩も近づけていない。魔法が使えたら、俺が援護できたら。
【流砲】の詠唱、イメージの固定化、毒による精神の不安定、思考が定まらない、不発、魔法が使えないくそくそくそくそ!
……ここまで無力感を味わったのは、衆でボコボコにされたとき以来か。あの時は、俺は弱くて、それでも魔法なら何でもできると思っていて、【ゼロ】なんてものも知らなくて。……【ゼロ】?
「まあかの有名な【隻眼】なら召喚後でもどうだかはわかりませんけれどもね?我等がリーダー様でも可能かもしれませんねえ。覚えて置いてください?近接タイプが遠距離タイプと戦う上で最も重要なのはスピード!更に重要なのは知能!Bestest!ですね?」
「ああそうかい。別に俺はお前に勝てなくてもいいしなあ?そろそろ遮断システムも完成する頃だ、お前をあと少し足止めすりゃあいいだけのことだ」
「……………………ふう。
仕方が無いですね」
ミヤイニレからニヤニヤ笑いが完全に消え、目つきが変わった。やばい、ヤバイ、何かがヤバイ。
スライムが膨張し始める。そうだ、良く考えてみればあんなに巨大なスライムを召喚しておいて何故こいつは粘液を飛ばすだけだった?遊んでいたのか、まだ舐められていたのか、いやそんなことはどうでもいい。ここでやるしかない、やれなくてもやるしかない!
もし、【毒耐性】によってスライムの粘液に耐えているのだとしたら、
「ミヤイニレ!」
「おや、【ゼロ】様、まだ生きていたのですか。
非常に残念ですがお遊びの時間は終わったのです」
施行。念じる。
「お前の!」
「……?」
スキルチェック−【毒耐性】−
「【毒耐性】を!!」
「な!?」
【ゼロ】に!
「【煙霞の跡なく目目連】!!」
ジュッという音がして、ミヤイニレの体の一部が解けるのを確認した。間違いない、奴は【毒耐性】でスライムの粘液を防いでいたんだ。
しかし次の瞬間、スライムの中心にいたのは巨大な黒い目玉だった。目玉は甲高く鳴いた(どこからかは知らないが)後、どこかへ消えうせた。
ミヤイニレは逃げた、恐らく逃げたのだろう。良かった、守りきれた。
「おいてめぇが何をしたかしらねえが、余計なことをしてくれたな」
「ケチつける気か?俺の超魔法のおかげで奴はスタコラ逃げていったんだぜ?」
「そうかもしれねえが、一番厄介なのが残っただろうがよ」
「一番厄介なものって……?」
グィンの言葉に周りを見渡す。居た、残っていた。
紅い巨大なスライムが。
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