「で、【猫かぶり】ってのはどういうスキルなんだ?
嘘をバレなくする、とか言ってたが」
今俺たちは村人その1少女に連れられ森の中を歩いていた。
木々が密集していて、深く、暗い。
おまけにジメジメト湿気が多くて快適な環境とはお世辞にもいえない。
「そうですね……例えば……」
少女が答え、一拍置いてから続けた。
「私、リペノさんのこと、すっごくかっこいいと思います」
…………えーと、つまり。
「えっ、本当ですか!?
いやだなぁ、照れちゃいますよ!」
リペノは呑気に喜んでいた。
「おい」
「え?」
「……」
全く気づいていないようだ。
なるほど、【猫かぶり】ってのはこういうスキル……あれ?おかしくないか?
「今、私の言葉を嘘じゃないか?と疑うことができたでしょ?」
俺の胸中を読み取ったかのように少女は説明を始めた。
「そう、つまり【猫かぶり】を使えば、疑うことすら出来なくなっちゃうんです。逆を言えば疑うことが出来る時点で私の言ってることは真実なんです。」
彼女は例外はありますが、と付け加えた。
なるほど。地味だけど恐ろしいスキルだ。
これを使えば確かにPKだって出来てしまうかもしれない。
だけど俺にとってはさらに危惧すべきことがあった。
「で……なんでグィンセイミまで着いてきてるんだ?
お前いい加減シムシに帰れようんざりなんだよ」
リペノを挟んで反対側をその性悪男は歩いていた。
俺はてっきりこいつは付いて来ないもんだと思っていた。
なぜならここはシムシではなく大陸の東に位置する無所属地域だったからだ(と少女は言っていた)
シムシでなければグィンセイミの奴は興味を失うだろうと踏んでいた。
しかしその事実を知ってからも奴は少女に同行していた。
「ここからのシムシの正確な位置が分からねぇ。
こいつの町とやらで地図を拝借したらすぐに帰ってやるよ」
位置ぐらいそのご自慢のシムシの科学で何とかしろ。
GPSもないのか。
「それにその女の言うことが真実かも分からねぇ」
「あ?疑うことが出来たら本当のことだって言ってたじゃねえか」
「そもそもそれが嘘かも知れねぇ。
【猫かぶり】なんてスキルは存在しないかも知れねぇ。
サカグって野郎がこいつをPK扱いしてたのは事実だ」
なるほど……むかつくが確かに一理ある。
だけどそんなこと言ってたら堂々巡りじゃないか?
リペノがまじめな顔をして口を開いた。
グィンセイミに反論するんだろうと思っていたが違っていた。
むしろ逆だった。
「気を悪くしたらごめんなさい。実は僕も同じ考えです。
PKである確証も無いですが、PKでない確証も無いんです。
僕も本当はあなたを信じたいです。
それでも火の無いところに煙は立たないと言います。
とにかくサカグにもう一度会って、冷静に話をしてみないと……」
通常時は抜けているくせに、考えるときは意外と深くまで考えているようだ。
……何か俺だけ考えてない気がしてきたんだけど。
「どちらにしてもこの娘についていけばわかるんだろ?
現時点ではまだそんなに疑う必要も無いしな」
サカグは『次の作戦で』と言っていた。
また狙ってくるのは間違いない。
その時にふん縛って問い詰めればいい。
最悪、この少女がPKの可能性もあるけど、そんな不毛なことを考えても仕方が無い。
少女は言われなれてるのか、俺たちの疑いも気にせずに道案内を続けた。
森は奥に行くにつれいっそうその密度を増していく。
前方の見通しがさらに悪くなり、地面のぬかるみ具合も酷くなる。
どれくらいひどいかというと、俺が3回、リペノが5回転んだぐらいだ。
しかし少女はまるで自分の庭かのようにスイスイと歩いていく。歩き慣れているんだろう。
「ここです」
森を抜けると開けた土地にでた。
ぬかるみは相変わらずひどいが、それでも森の中に比べて随分明るく、涼しかった。
四辺を森に囲まれた中央に石造りの塀が見える。
「小さな町だけど、住んでる人は皆良い人ですよ。
あれ?誰かいますね」
少女の目線を追う。
石の塀に、木で作られた門があった。森の木から作ったんだろう。
その前に人が二人立っていた。なにやら話し合っているようだ。
一人は爺さん。きっと長老だろう。
長老っぽいひげをはやし、長老っぽくはげて、長老っぽいボロボロの服を着ている。
二人目は……あれ?
おかしいな、 あれ?
んん? ……あれ?
あれ?
そうこうしているうちに門の前に辿り着いてしまった。
長老と話していた女性が、こちらに気づく。
「ウルトンさん!?何でこんなところに……?」
お姉さんだった。
望んでいない再会だった。
望んでいた再会の仕方はちょっと恥ずかしすぎるので言えない。
でもせめてもっと成長してから合いたかった……
「お姉さんこそ、何でこんなところに?」
「えーっと、それはですね、うーん……
ここじゃなんですし、中に入って話しませんか?
長老も、話の続きは中で宜しいですよね?」
俺、グィンセイミ、リペノ、長老、村人その1少女、そしてお姉さんの大所帯で町の中を歩く。
見事に内部まで石造りだった。
ところどころに木で補強された後がある。随分昔に作られた町のような古風な雰囲気があった。
歩きながらお姉さんと俺の関係、俺が何故ここにいるかを説明した。
代わりにお姉さんはこの町の説明をしてくれた。
お姉さんは最後にあったときと変わっていない様子だった。
ただ、少し疲労の色が見える。こんな辺鄙なところで何をしていたんだろうか?
「あ、そうだ。
プレゼントがあるんですよ」
「本当ですか?」
離れ島で手に入れた円板を取り出す。
どんな価値があるかは知らないが、あんなところに埋まってたんだ。
価値があるもんなんだろう、というか価値があってくれ。
天使が描かれている円板を目にした瞬間、お姉さんの顔色が変わった。
「これは!!あの伝説の!!!」
「そ、そんなにすごいアイテムなんですか?」
こんなにも驚かれるとは思っていなかった。
逆にこっちが驚いた。何なんだ、このアイテムは。
お姉さんが顔を輝かせながらハイテンションでしゃべり続けた。
「これはですね、宴会や一発芸大会で使うとかなり役に立ちますよ!
これの名前はですねー」
「…………………いや、もう説明はいいです」
「え?」
「なんか萎えるんで…………」
暫く歩いて町の中央に着いた。大きな建物が立っていた。
この町の中で一番大きい建物だろう。これもまた石造りだ。
「さあ、着きました。
この中で説明しましょう。
『私が何故ここにいたのか』、そして『この町は何なのか』。
皆さんもここに来てしまったからには、聞いておいたほうがいいでしょう。
ウルトンさんは、特に」
嘘をバレなくする、とか言ってたが」
今俺たちは村人その1少女に連れられ森の中を歩いていた。
木々が密集していて、深く、暗い。
おまけにジメジメト湿気が多くて快適な環境とはお世辞にもいえない。
「そうですね……例えば……」
少女が答え、一拍置いてから続けた。
「私、リペノさんのこと、すっごくかっこいいと思います」
…………えーと、つまり。
「えっ、本当ですか!?
いやだなぁ、照れちゃいますよ!」
リペノは呑気に喜んでいた。
「おい」
「え?」
「……」
全く気づいていないようだ。
なるほど、【猫かぶり】ってのはこういうスキル……あれ?おかしくないか?
「今、私の言葉を嘘じゃないか?と疑うことができたでしょ?」
俺の胸中を読み取ったかのように少女は説明を始めた。
「そう、つまり【猫かぶり】を使えば、疑うことすら出来なくなっちゃうんです。逆を言えば疑うことが出来る時点で私の言ってることは真実なんです。」
彼女は例外はありますが、と付け加えた。
なるほど。地味だけど恐ろしいスキルだ。
これを使えば確かにPKだって出来てしまうかもしれない。
だけど俺にとってはさらに危惧すべきことがあった。
「で……なんでグィンセイミまで着いてきてるんだ?
お前いい加減シムシに帰れようんざりなんだよ」
リペノを挟んで反対側をその性悪男は歩いていた。
俺はてっきりこいつは付いて来ないもんだと思っていた。
なぜならここはシムシではなく大陸の東に位置する無所属地域だったからだ(と少女は言っていた)
シムシでなければグィンセイミの奴は興味を失うだろうと踏んでいた。
しかしその事実を知ってからも奴は少女に同行していた。
「ここからのシムシの正確な位置が分からねぇ。
こいつの町とやらで地図を拝借したらすぐに帰ってやるよ」
位置ぐらいそのご自慢のシムシの科学で何とかしろ。
GPSもないのか。
「それにその女の言うことが真実かも分からねぇ」
「あ?疑うことが出来たら本当のことだって言ってたじゃねえか」
「そもそもそれが嘘かも知れねぇ。
【猫かぶり】なんてスキルは存在しないかも知れねぇ。
サカグって野郎がこいつをPK扱いしてたのは事実だ」
なるほど……むかつくが確かに一理ある。
だけどそんなこと言ってたら堂々巡りじゃないか?
リペノがまじめな顔をして口を開いた。
グィンセイミに反論するんだろうと思っていたが違っていた。
むしろ逆だった。
「気を悪くしたらごめんなさい。実は僕も同じ考えです。
PKである確証も無いですが、PKでない確証も無いんです。
僕も本当はあなたを信じたいです。
それでも火の無いところに煙は立たないと言います。
とにかくサカグにもう一度会って、冷静に話をしてみないと……」
通常時は抜けているくせに、考えるときは意外と深くまで考えているようだ。
……何か俺だけ考えてない気がしてきたんだけど。
「どちらにしてもこの娘についていけばわかるんだろ?
現時点ではまだそんなに疑う必要も無いしな」
サカグは『次の作戦で』と言っていた。
また狙ってくるのは間違いない。
その時にふん縛って問い詰めればいい。
最悪、この少女がPKの可能性もあるけど、そんな不毛なことを考えても仕方が無い。
少女は言われなれてるのか、俺たちの疑いも気にせずに道案内を続けた。
森は奥に行くにつれいっそうその密度を増していく。
前方の見通しがさらに悪くなり、地面のぬかるみ具合も酷くなる。
どれくらいひどいかというと、俺が3回、リペノが5回転んだぐらいだ。
しかし少女はまるで自分の庭かのようにスイスイと歩いていく。歩き慣れているんだろう。
「ここです」
森を抜けると開けた土地にでた。
ぬかるみは相変わらずひどいが、それでも森の中に比べて随分明るく、涼しかった。
四辺を森に囲まれた中央に石造りの塀が見える。
「小さな町だけど、住んでる人は皆良い人ですよ。
あれ?誰かいますね」
少女の目線を追う。
石の塀に、木で作られた門があった。森の木から作ったんだろう。
その前に人が二人立っていた。なにやら話し合っているようだ。
一人は爺さん。きっと長老だろう。
長老っぽいひげをはやし、長老っぽくはげて、長老っぽいボロボロの服を着ている。
二人目は……あれ?
おかしいな、 あれ?
んん? ……あれ?
あれ?
そうこうしているうちに門の前に辿り着いてしまった。
長老と話していた女性が、こちらに気づく。
「ウルトンさん!?何でこんなところに……?」
お姉さんだった。
望んでいない再会だった。
望んでいた再会の仕方はちょっと恥ずかしすぎるので言えない。
でもせめてもっと成長してから合いたかった……
「お姉さんこそ、何でこんなところに?」
「えーっと、それはですね、うーん……
ここじゃなんですし、中に入って話しませんか?
長老も、話の続きは中で宜しいですよね?」
俺、グィンセイミ、リペノ、長老、村人その1少女、そしてお姉さんの大所帯で町の中を歩く。
見事に内部まで石造りだった。
ところどころに木で補強された後がある。随分昔に作られた町のような古風な雰囲気があった。
歩きながらお姉さんと俺の関係、俺が何故ここにいるかを説明した。
代わりにお姉さんはこの町の説明をしてくれた。
お姉さんは最後にあったときと変わっていない様子だった。
ただ、少し疲労の色が見える。こんな辺鄙なところで何をしていたんだろうか?
「あ、そうだ。
プレゼントがあるんですよ」
「本当ですか?」
離れ島で手に入れた円板を取り出す。
どんな価値があるかは知らないが、あんなところに埋まってたんだ。
価値があるもんなんだろう、というか価値があってくれ。
天使が描かれている円板を目にした瞬間、お姉さんの顔色が変わった。
「これは!!あの伝説の!!!」
「そ、そんなにすごいアイテムなんですか?」
こんなにも驚かれるとは思っていなかった。
逆にこっちが驚いた。何なんだ、このアイテムは。
お姉さんが顔を輝かせながらハイテンションでしゃべり続けた。
「これはですね、宴会や一発芸大会で使うとかなり役に立ちますよ!
これの名前はですねー」
「…………………いや、もう説明はいいです」
「え?」
「なんか萎えるんで…………」
暫く歩いて町の中央に着いた。大きな建物が立っていた。
この町の中で一番大きい建物だろう。これもまた石造りだ。
「さあ、着きました。
この中で説明しましょう。
『私が何故ここにいたのか』、そして『この町は何なのか』。
皆さんもここに来てしまったからには、聞いておいたほうがいいでしょう。
ウルトンさんは、特に」
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