41.雷
2007年3月9日泉の周りを良く見渡してみる。いない、いない。どこにもいない。
キョロキョロしているとポチがこちらに近づいてきた。
「あの女の人ならザクロさんが呪いの解除を始めるとすぐに居なくなりましたよ。
『私の役目はもう終わりました』と呟いていましたけど」
雷撃が体中を走り抜けたかのような衝撃だった。
考える間もなく足が動いた。木々の間を抜け走る。
なんだって?役目?何言ってんだ、ふざけんなよ!
森を抜けて集落に出る。役目が終わった?なら向かう先は――
北、いない。東、いない。南、いない。西――いた。集落の西側の入り口に向かって歩いている。
「ちょっと!何してんですか!」
入り口に向かって走りながら大声で叫ぶ。俺の声が聞こえたお姉さんは少し驚いた顔をしていた。
「あら。案外速かったですね、流石【幸運の女神】です」
「役目が終わった、って、何、言ってんですか!どういうことですか!」
お姉さんの正面に回りこみ、息も絶え絶えの状態で問い詰める。
お姉さんは困ったように笑った。
「落ち着いてください。
そうですね。当初の目的は『【ゼロ】を持つ者を昇天させないこと』だったんです」
【ゼロ】?俺が【ゼロ】を持っていたから?
じゃあもし俺がただの初心者だったら?
様々な思考が渦巻いている俺の顔をお姉さんが覗き込んできた。久しぶりに目を捕らえられた気がする。
「ふふ。でもあなたが毎日必死で魔法の勉強をしているのを見ているうちに
『この人の可能性を見てみたい、見届けたい』という思いが強くなってきたんです。
だからあなたに着いていって、魔法をみっちり教え込みました」
人の目をしっかり捕らえながらこういうことを言ってくるんだから、この人は。
不安が一気に恥ずかしさに変わる。しかもこの感情も【読心術】によって読み取られているのでさらに恥ずかしい。
お姉さんは一瞬表情を曇らせた。でもすぐにいつもの笑顔に戻る。
「でも気づいたんです。
私と一緒にいてもあなたの可能性は先には進まない」
「どういうことですか……?」
「生徒が師匠に習う期間は終わりました。
これからは独り立ちする時期です。
あなたはもう一人前の魔法使いなんですから」
キョロキョロしているとポチがこちらに近づいてきた。
「あの女の人ならザクロさんが呪いの解除を始めるとすぐに居なくなりましたよ。
『私の役目はもう終わりました』と呟いていましたけど」
雷撃が体中を走り抜けたかのような衝撃だった。
考える間もなく足が動いた。木々の間を抜け走る。
なんだって?役目?何言ってんだ、ふざけんなよ!
森を抜けて集落に出る。役目が終わった?なら向かう先は――
北、いない。東、いない。南、いない。西――いた。集落の西側の入り口に向かって歩いている。
「ちょっと!何してんですか!」
入り口に向かって走りながら大声で叫ぶ。俺の声が聞こえたお姉さんは少し驚いた顔をしていた。
「あら。案外速かったですね、流石【幸運の女神】です」
「役目が終わった、って、何、言ってんですか!どういうことですか!」
お姉さんの正面に回りこみ、息も絶え絶えの状態で問い詰める。
お姉さんは困ったように笑った。
「落ち着いてください。
そうですね。当初の目的は『【ゼロ】を持つ者を昇天させないこと』だったんです」
【ゼロ】?俺が【ゼロ】を持っていたから?
じゃあもし俺がただの初心者だったら?
様々な思考が渦巻いている俺の顔をお姉さんが覗き込んできた。久しぶりに目を捕らえられた気がする。
「ふふ。でもあなたが毎日必死で魔法の勉強をしているのを見ているうちに
『この人の可能性を見てみたい、見届けたい』という思いが強くなってきたんです。
だからあなたに着いていって、魔法をみっちり教え込みました」
人の目をしっかり捕らえながらこういうことを言ってくるんだから、この人は。
不安が一気に恥ずかしさに変わる。しかもこの感情も【読心術】によって読み取られているのでさらに恥ずかしい。
お姉さんは一瞬表情を曇らせた。でもすぐにいつもの笑顔に戻る。
「でも気づいたんです。
私と一緒にいてもあなたの可能性は先には進まない」
「どういうことですか……?」
「生徒が師匠に習う期間は終わりました。
これからは独り立ちする時期です。
あなたはもう一人前の魔法使いなんですから」
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