36.狂
2007年3月4日――ウルトンと瓦礫で挟まれた向こう側、お姉さんと隼―
花傘を閉じたのは迂闊だった。
宗徳から【読心術】で読み取れたのは弄ぶような殺意だけ。
攻撃を仕掛けてくるなら正面からだと思ってたのにまさか崖を崩すなんて。
あの人は大丈夫だろうか……
「よそ事を考えているなんて余裕だな」
隼と呼ばれた男は腰には刀をぶら下げている。
……直接打撃系、なら接近戦に持ち込ませなければいい。
接近型のタイプとの1対1での戦闘で長い詠唱は禁物だ。
多少威力は落ちるけど所々省略するしかない。
「―――我を守護せよ、【水魔法:壁―――」
「遅いな、死ね」
確認できたのは地を蹴る場面だけ。次の瞬間には懐に潜り込まれていた。
下方からの逆袈裟切り。本来なら私の胴体を切り裂くはずの隼の刀は【水衣】に弾かれ宙を切る。
【水衣】の効果は解け、パシャリと水が落ちた。
この隼という男、機械やパートナーも使わないでこのスピードは狂ってる。
恐らく【音速】!
「……便利なスキルだな。敵の攻撃を防ぐ魔法か」
隼から一定の距離を取る。
【音速】相手に距離など関係ないけども、それでも隣接しているよりはましだ。
今のうちに【水衣】を……
詠唱を途中で止める。
「どうした?さっさと張れよ。そんな魔法俺に2度通用しないと教えてやるよ」
【水衣】の維持には多大な力を使う。
それも二人分、しかも戦闘中ともなるともって10分。
「……」
パシャリッ、途中まで出来上がっていた水衣が体から落ちる。
【音速】相手に【水衣】無しで闘うのは不可能だ。
それでもウルトンさんの【水衣】が切れることだけは防がなくちゃいけない。
「発動条件でもあるのか?まぁいい、それがお前の全力というならな。
俺の【音速】と『日光刀』そしてこの天候。
お前に勝ち目は無い、さっさと死ね」
『日光刀』。光、熱の吸収分だけ強くなり、そのエネルギーで形状をも変えられるという刀。
レアアイテムだったはず……欲しい。
自分より素早い相手と闘う場合、相手の動きを奪うのが定石だ。
でもただの氷魔法じゃ【音速】は捕まらない。
「全知全能の神、その角、耳、鼻そして目に宿いし聖なる涙よ」
詠唱を始める。一発は、覚悟しないといけないかな。
「だから遅いっつってんだろ!」
【読心術】……私を切る、というイメージしか掴み取れない。
本当に不安定なスキルだ。
なら勘だけになっちゃうな。まったくもう。
花傘を唐突に開いて体の横に置いた。一瞬隼の動きが止まったのが感じられる。
でもそれだけ。致命傷を受けないで済んだだけ。
背中に猛烈な痛み。怯んでいる暇はない。詠唱を唱えきる。
「【水魔法:海神宴】!」
体中から流れ出る水。水。水。大量の水。
一瞬にして道は海になる。
とりあえず隼の【音速】は封じた。次は……
「こんなもんで俺の動きを封じたつもりか!?
日光刀の恐ろしさがわかってねぇようだな!!」
日光刀の形が槍になる。なるほど、離れてたとしてもあれで攻撃するつもりのようだ。
そうはさせない。詠唱。
「凍えよ【氷魔法:氷結】」
海が全て一瞬にして氷河へと変化する。
もちろん私の周り以外だ。
隼は凍っている。
live世界での生命力はたくましいものがあるのでこれくらいじゃ昇天はしない。
ウルトンさんのほうが心配だ。
早く様子を……その前に……
「日光刀、貰っていきますね」
花傘を閉じたのは迂闊だった。
宗徳から【読心術】で読み取れたのは弄ぶような殺意だけ。
攻撃を仕掛けてくるなら正面からだと思ってたのにまさか崖を崩すなんて。
あの人は大丈夫だろうか……
「よそ事を考えているなんて余裕だな」
隼と呼ばれた男は腰には刀をぶら下げている。
……直接打撃系、なら接近戦に持ち込ませなければいい。
接近型のタイプとの1対1での戦闘で長い詠唱は禁物だ。
多少威力は落ちるけど所々省略するしかない。
「―――我を守護せよ、【水魔法:壁―――」
「遅いな、死ね」
確認できたのは地を蹴る場面だけ。次の瞬間には懐に潜り込まれていた。
下方からの逆袈裟切り。本来なら私の胴体を切り裂くはずの隼の刀は【水衣】に弾かれ宙を切る。
【水衣】の効果は解け、パシャリと水が落ちた。
この隼という男、機械やパートナーも使わないでこのスピードは狂ってる。
恐らく【音速】!
「……便利なスキルだな。敵の攻撃を防ぐ魔法か」
隼から一定の距離を取る。
【音速】相手に距離など関係ないけども、それでも隣接しているよりはましだ。
今のうちに【水衣】を……
詠唱を途中で止める。
「どうした?さっさと張れよ。そんな魔法俺に2度通用しないと教えてやるよ」
【水衣】の維持には多大な力を使う。
それも二人分、しかも戦闘中ともなるともって10分。
「……」
パシャリッ、途中まで出来上がっていた水衣が体から落ちる。
【音速】相手に【水衣】無しで闘うのは不可能だ。
それでもウルトンさんの【水衣】が切れることだけは防がなくちゃいけない。
「発動条件でもあるのか?まぁいい、それがお前の全力というならな。
俺の【音速】と『日光刀』そしてこの天候。
お前に勝ち目は無い、さっさと死ね」
『日光刀』。光、熱の吸収分だけ強くなり、そのエネルギーで形状をも変えられるという刀。
レアアイテムだったはず……欲しい。
自分より素早い相手と闘う場合、相手の動きを奪うのが定石だ。
でもただの氷魔法じゃ【音速】は捕まらない。
「全知全能の神、その角、耳、鼻そして目に宿いし聖なる涙よ」
詠唱を始める。一発は、覚悟しないといけないかな。
「だから遅いっつってんだろ!」
【読心術】……私を切る、というイメージしか掴み取れない。
本当に不安定なスキルだ。
なら勘だけになっちゃうな。まったくもう。
花傘を唐突に開いて体の横に置いた。一瞬隼の動きが止まったのが感じられる。
でもそれだけ。致命傷を受けないで済んだだけ。
背中に猛烈な痛み。怯んでいる暇はない。詠唱を唱えきる。
「【水魔法:海神宴】!」
体中から流れ出る水。水。水。大量の水。
一瞬にして道は海になる。
とりあえず隼の【音速】は封じた。次は……
「こんなもんで俺の動きを封じたつもりか!?
日光刀の恐ろしさがわかってねぇようだな!!」
日光刀の形が槍になる。なるほど、離れてたとしてもあれで攻撃するつもりのようだ。
そうはさせない。詠唱。
「凍えよ【氷魔法:氷結】」
海が全て一瞬にして氷河へと変化する。
もちろん私の周り以外だ。
隼は凍っている。
live世界での生命力はたくましいものがあるのでこれくらいじゃ昇天はしない。
ウルトンさんのほうが心配だ。
早く様子を……その前に……
「日光刀、貰っていきますね」
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