29．変

「さっき雑貨屋で噂話を聞きました。アイゼン首相が行方不明になったそうです」
お姉さんが俺の手を取り支え上げながら耳元で囁く。
「だからってあそこまで」
「あの人にとってはそれだけ大事な、大事な人だったんでしょう」

大事な人。自分の大事な人がいなくなる気持ち……
ロボット女のほうを向く。
　
「俺が軽率だった。すまん」
「……アイゼン様に謝れ」
「……アイゼン様すんませんでした」
「すんませんじゃねえだろすみませんでした一生お詫びいたしますって言えコラ」
「なんだとてめー人が……」

後頭部2撃目。痛い。
「ごめんなさい、この人変に意地っ張りだから……」
　
　
　
その後お姉さんは何とか説得できたようで、機械女はジェット噴射で空に飛び去った。
（ショートした部分は自動で直ったみたいだ。）
　
　
　
「駄目ですよ、むやみに喧嘩を売っちゃ」
その後はお姉さんの説教地獄だった。
お姉さんというかもうまるでお母さんだ。

「それに、あの人はこの街を統治してる7-3、つまりシムシ首相アイゼンの側近≪セブン≫の一人です。
　……もう少しで殺されてたかもしれなかったんですよ？」
「ごめんなさい……」
「まぁ、でも。実戦で魔法、使えましたね」
お姉さんは自分のことかのようににっこりと笑った。
未だにこの人の性格が掴みきれない。

「暫くこの街で【幸運の女神】の情報を集めますから、観光しててもいいですよ。
　あ、その前に、水魔法かけなおしておきますね」
　
あ、あの修行まだ続くんだ……